働き方改革の「成功事例」に潜む矛盾と副作用 サイボウズ謝罪広告の是非を考えてみよう

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人材派遣会社が成功事例になる矛盾

常見:メディアで紹介される「働き方改革」の成功企業や成功事例にも、必ず「副作用」はあります。

よくある「労働時間を減らしたけど、売り上げは落ちなかった」みたいな話は注意して分析しなくてはいけません。それが下請けイジメによって成り立っているのなら問題だと思う。あるいは業界全体が成長しているだけかもしれない。

たとえば某人材派遣会社が働き方改革をして、長時間労働が減って、社員が子どもを産んだ数が増えて、しかも売り上げは伸びた。こんな三拍子揃っていいことなんです、と喧伝されるけど、実は派遣業界はみんな伸びていたという。

おおた:しかもちょっと待てよと。そもそも「働き方改革」でみんながちゃんと正社員的にというか、まともな仕事に就けるようにしようって言っているときに、非正規マーケットが盛り上がっていること自体、大きな矛盾じゃないですか(笑)。

労働者にとってあんまりいい状況じゃない方向に社会情勢が進むほど儲かる仕組みの会社を働き方改革の成功事例として述べること自体、僕ならためらうな……。

一部の正社員のワークライフバランスを支えるために非正規雇用のワーキングプアが発生するようなことはあってはいけないと思うんですよね。

常見:ほかにもあります。電通、伊藤忠商事などが取り組んでいる「強制退社時間の設定」は逆に会社に滞在する時間を固定してしまうリスクがあります。既に報じられているように電通の場合は、持ち帰り残業も誘発しています。

退社時間から次の出社時間まで一定の時間をとる「インターバル規制」も運用に気をつけないと、その懸念があります。

加えて、「在宅勤務の推進」については、移動時間を減らすメリットがある一方で、労働時間の削減には必ずしもつながらないのではないかという指摘もあります。また、リアルな場で従業員同士がコミュニケーションすることの価値が再確認されており、導入していた企業でも見直しの動きがありますね。

おおた:先週、Facebookの日本法人に行って、ちょっと話す機会がありました。オフィスの中にバーカウンターがあって、いつでも軽食が食べられるスナックスタンドみたいのがあって、その日は寿司職人まで来ていましたよ。当然彼らはPCさえあればどこでも仕事ができるんだけども、あえて、雑談や無駄な時間が生まれるようなオフィス設計にしている。

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