働き方改革の「成功事例」に潜む矛盾と副作用 サイボウズ謝罪広告の是非を考えてみよう

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サイボウズの謝罪広告はちょっと残念

常見:そうそう、サイボウズ社が働き方改革について「謝罪広告」を出しましたよね。あれはどう受け止めました?

***
※サイボウズ社の「働き方改革に関するお詫び」より一部抜粋
この国に「働き方改革ブーム」が到来し、私たちの活動に広く注目していただけるまでになりました。
ところが、ところがです。私たちの意思はまったく伝わっておりません。とにかく残業はさせまいとオフィスから社員を追い出す職場、深夜残業を禁止して早朝出勤を黙認する職場、働き方改革の号令だけかけて現場に丸投げする職場。なんですか、そのありがた迷惑なプレミアムフライデーとやらは…。
私たちが伝えたかった「働き方」とは、そういうことではないのです。メディアに登場し、全国で講演をし、政府へ意見し、本を出版してもなお、伝わっていない。
私たちにもっと力があれば、私たちがもっと強くメッセージを発信できていれば、このような働き方改革の現状にならなかったのかもしれない。不甲斐なさと、申し訳なさでいっぱいです。
***

おおた:残念な結果が出始めてから、働き方改革を批判するのは「後出しじゃんけん」でしょ。「お詫び」という形で、あたかも自分たちが働き方改革の牽引役であるというようなポジションをとりながら、同時に「自分たちは間違っていない」と主張するのは、企業広告としては非常に巧妙だけど、卑怯だとも感じた。

「サイボウズの広告(アニメ)には改善策が示されていない」(おおたとしまさ氏)

常見:新聞広告だけでなくWebではアニメ(サイボウズ ワークスタイルアニメ『アリキリ』)も用意されていました。

おおた:お詫びから誘導されるあのアニメでは、拙速な働き方改革の結果としての残念な事例を面白おかしく笑っているだけ。どうしてそういう本末転倒が起こってしまったのかを検証していないし改善策も示されていない。そのことから、あの広告が本気のお詫びではないことは明らか。本質的な働き方改革が進まないことで、心を病んでしまったり、家庭が崩壊しかかったりしている労働者がたくさんいる現状において、彼らに対して本気でお詫びするつもりだったら、ああいうトーン&マナーにはならないでしょう。

常見:あの広告では働き方改革圧力がもたらした現状に不満を持つ人たちの溜飲を下げることはできても、現状の改善にはつながりませんからね。

おおた:そもそも無理矢理、社員を会社から追い出したり、形だけ女性取締役を増やしたりすることが本来の働き方改革でないことは誰だってわかっているんですよ。

常見:それを「私たちはこれまでも指摘してきた」とアピールされてもねぇ(笑)。

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