「スニーカー狂」がナイキを語ると、こうなる 「そこには文化、哲学、物語、すべてがある」
榎本:ワッフルトレーナーは何度も復刻されていますね。40年も前に作られた靴なのに、今の僕たちが見てもめちゃくちゃかっこいい。不思議ですね。こんな名作が生まれたのはどうしてでしょう?
アクタガワ:『シュードッグ』の最後のほうにヒントがあると思います。フィル・ナイトが、ビジネスはカネじゃないとはっきり言っている。僕は、その言葉を見て「待ってました!」と思いました。
創業当時のフィル・ナイトは、アディダスという巨大な帝国をどう打ち負かすか考えていた。ベンチマークはアディダス。手にした武器はオニツカタイガー。アディダスを超えるにはどうすればいいか? 性能、見た目、カラーリング……どこで勝負しようか。
そこでナイキは、「どう売ろうか」ではなく、あの手この手で「アディダスをギャフンと言わせよう」と考えたと思うんです。在庫なんか多少残ってもいいから「びっくりさせてやる」って。そこが、名作シューズにつながっていく要因だったと思います。
榎本:いろんな起業家がいますが、フィル・ナイトほどスーパーエリートで、育ちがよくて、なおかつハングリー精神のある人というのは、なかなかいませんね。
泥臭くて、熱くて、ストイック
国井:僕は、「ナイキの強みはマーケティング、アディダスの強みはモノづくり」というイメージをずっと植え付けられていました。でも『シュードッグ』を読んで、ナイキのイメージが変わりました。ここまでストイックにモノづくりに挑戦しているとは思わなかった。スマートな印象だったのに、泥臭くて熱い部分がある。
アクタガワ:スマートというのは、現在のナイキのイメージだと思うんですよ。ナイキは、株式を公開する前と後とでは大きく変化している、今はとてもクールな部分もあり、手弁当でやっていた初期の頃とは印象が違う。フィル・ナイト本人にとっても『シュードッグ』に描かれている時期はものすごく熱くて、トラブルに見舞われつつ、頑張った印象が強いんじゃないかな。
榎本:僕らにとってのナイキは、マーク・パーカーという秀でたCEOがいて、エアマックスを生み出したティンカー・ハットフィールドのような優れたデザイナーがいて、洗練された広告をつくるエージェンシーがいて……といったイメージです。でも『シュードッグ』を通じて、ナイキの礎になったのは、フィル・ナイトの強烈な信念と情熱、ケタ外れに熱い魂なんだと感じますね。
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