ただし対処法、コーピングスタイルは見直す必要もあるという。
「ストレスに出合ったとき、立ち向かうか別のことをしながらしのぐか。それまで自分が長い間やってきた対処法には意味があり、自分に“向いている”方法を選んでいる可能性があります。ただし、たとえば会社の昇級試験を受けなければならないのに、いつまでも逃げているような場合には、それでいいのかと一度、見直す必要もある。大事なのは、問題意識を持ちながら暮らすことです」。
苦しい場面に出合ったときも上手に問題点をつかまえ、どんな対処法でしのいでいこうか、と「学びの心」を持つことがストレスマネジメントにとって大事なことだと緒方医師は主張する(ただしモチベーションが高く、一定以上の適応能力のある集団の場合)。
宇宙飛行士たちのストレス対処を実際に端から見ていると、確かに学ぶべき点は多い。日常の訓練でもミスは当然あるが、その原因を把握し対処法をきちんと考えたら、「次は頑張ろう」と引きずらずに気持ちを切り替える。失敗を引きずれば、翌日の訓練でまたミスしてしまうからだ。
だが、大事故などが起こったときは対処が異なる。
野口聡一飛行士は2003年にスペースシャトル・コロンビア号事故が起こった際、次のフライトで飛ぶ予定だった。次は自分が死ぬかもしれないという恐怖や残される家族、宇宙飛行の意味などを徹底的に悩み抜き、納得することで自分を強く持ち、ブレずに前に進むことができたという。「悩むことで人間的に大きく成長した」と当時の野口飛行士の様子を、先輩である毛利衛氏は語っていた。
もちろん宇宙飛行と地上の仕事では異なる点が多い。しかし24時間迅速な仕事を迫られ、立場の異なる人たちの中で、ときに異文化対応もしながら、仕事をする現代のビジネスパーソンの状況は、ある意味ではISSに近いと言えるのかもしれない。
どんな仕事であれ、モチベーションの源泉をしっかり確認すること。そして自分のカギ穴=弱点を見つけて、対処することを考える。そうすれば、苦しい場面も学びの場に変えて、1段ずつ階段を上っていくことは誰にでも可能なのだ。
(撮影:風間仁一郎)
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