現代社会、特に会社組織はストレスにあふれ、それを感じずに生きるのは難しい。ではいったい、ストレスとどのように向き合っていけばいいのか。
そのヒントが宇宙にある。国際宇宙ステーション(ISS)はさまざまなストレスがかかる「最高級」のストレス環境だ。にもかかわらず、宇宙飛行士たちは、約6カ月のもの間、宇宙空間で生活し仕事をしている。実際、宇宙飛行士達を見ていると打たれ強く、オンとオフの切り替えも見事。きっとストレスマネジメントの「ノウハウ」があるに違いない。
そのノウハウを熟知するのが、「宇宙医学専門医(フライト・サージャン)」と呼ばれる人たちである。フライト・サージャンの仕事は、宇宙飛行士の選抜、養成、健康管理を行うこと。国際会議のひとつである多数者間宇宙医学委員会で認定を受けなければならず、その数は経験者を含めても日本国内では10人ほどしか居ない。彼らを束ねるのが、JAXAの総括医長である緒方克彦さんだ。
そもそも、宇宙飛行士はISSでどんなストレスにさらされているのか。
「まず身体的ストレスについて言うと、代表的なものに微小重力、高い放射線環境の2つがあります。さらに騒音や振動、ISSが地球の周りを90分で1周するため、約45分ごとにくるくる入れ替わる昼と夜。細かい点では、地上のように重力に従って身体から自然に離れていくわけではないため、トイレだってストレスのひとつになりえます。
そして精神的ストレス。ISSは”閉鎖型環境”であり、定められた場所に居続けなければならない。しかも約6カ月もの長期間に及ぶ。任務の達成やこれらの特殊環境を精神的ストレスの縦軸とすれば、人間関係は横軸のストレスと言えるでしょう。」と緒方医師は説明する。
窓の外は無限に広がる宇宙。だがそこは生身の体では生きられない「死の世界」であり、容易に出ることはできない。同じメンバーで24時間、長期間を過ごす。気分転換で飲みにも行けず、気持ちの逃げ場がない。
「ISSでは、2009年ごろから米国やロシア、日本など15カ国の多国籍の宇宙飛行士で一緒にする仕事も増え、交流が活発になってきた。それに伴って言葉、文化、モノの価値観が違うことから起こる”異文化間ストレス”が以前より増してきたのです」。
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