「両親も本当は友達が欲しいのだと思います。よく行く飲食店で店長さんなどを気に入っては飲みに誘っているようです。でも、プライベートでお店での気遣いを続けることはできませんよね。親はそれに腹を立てて、しばらく経つと絶縁してしまうんです」
他人との適切な関係を作って距離感を保つのが苦手な夫婦なのだ。そんな彼らにとって一人娘の由佳さんは言いなりになる「所有物」。子どもの頃から殴る蹴るの暴力的なしつけを受けてきて、それが当たり前だと思っていたと由佳さんは明かす。
「歯の治療のためにほおが腫れたとき、『親にひっぱたかれたときと同じぐらいの腫れ方なので気になりません』と歯医者さんに言ったらびっくりされてしまいました。ほかの家ではひっぱたかれたりはしないんでしょうか……」
結婚後も親の干渉は止まらない
29歳のとき、結婚する機会が再び巡ってきた。相手は7歳上。職場の先輩社員の啓介さん(仮名)である。
「毎日話しているうちに私のほうからすごく好きになりました。体は小さいけれど器が大きい人だから。何事にも動じず、私が親から夜9時が門限にされていても文句を言ったりはしませんでした。社会人なのに門限があるだけで引いてしまう男性もいると思います」
おそらく筆者もその一人である。親の過干渉を嫌がる前に、その言いなりになっている相手の未成熟さを疑ってしまうだろう。親離れできていない人に魅力を感じるのは難しい。
しかし、由佳さんには言い分があった。両親は常識が通用しない人たちなので、下手に反抗すると4年前のように暴れ出しかねない。表面的にでも従っておくのが無難なのだ。
娘夫婦との同居を主張する両親の意向はなんとかごまかし、ようやく啓介さんとの結婚生活を始めた由佳さん。それでも両親の干渉は止まらない。毎週末は必ず電話を入れ、毎月1度は実家に戻ることを要求してきた。
「それが常識だろう、と言われました。私が元気で暮らしているのかを確認したいというのです。そのうちに彼の両親とも定期的に食事会をしたがるようになって……。彼の両親はそんなに密にうちの親と付き合うつもりはありませんでした。当たり前ですよね。それとなく断り続けていたら、うちの両親は『非常識だ』と怒り始めて私は板挟みになってしまいました」
啓介さんはあまり関心を示さず、気にしているようにも見えなかった。由佳さん一人が親に関する我慢と努力を続けるしかない。しかし、啓介さんが助けてくれないことへの不満が募り、仲違いすることが増え、半年間の別居の末に離婚することになってしまった。
「彼は何も悪くないし、とてもいい人だったのに申し訳ないことをしました」
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