「結婚を妨害する親」に38歳娘はこう抵抗した 婚約破談、離婚という経験を乗り越え…

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悲しみを抱えながら、31歳で実家に戻った由佳さん。ただし、絶望はしなかった。結婚して自分の家庭を築くことをあきらめたわけではないのだ。30代半ばになり「出会いは待っていても来ない」と感じて、合コンを自ら企画。街コンにも参加した。

「合コンは何度も開くことはできませんし、街コンは若い子が多いのだと知りました。お見合いパーティは年齢層が高めだし気軽に参加できるので便利ですね。参加すれば必ず誰かとマッチングできていました。デートしてみて話が合う人はなかなかいなかったのですが……。今のダンナさんと知り合ったのもお見合いパーティです」

章一さんとは結婚を前提に交際を始めたが、結婚への障壁となったのはやはり由佳さんの両親だった。由佳さんを手放したくないあまり、章一さんが婿養子となって同居することを強く希望した。由佳さんの旧姓を仮に鈴木とする。章一さんも長男であり、佐々木から鈴木になることには抵抗を示した。

「私はどちらでもよかったけれど、ダンナさんに無理に鈴木になってもらいたくありません。今では私が佐々木になってよかったと思っています」

実際には簡単に結婚できたわけではない。強行突破をすると10年前のように両親が暴走して、章一さんに迷惑をかけかねないからだ。甲斐性のある章一さんはいつでも由佳さんと結婚生活が送れるように一戸建ての住宅も購入したが、由佳さんはなかなか実家を出ることができなかった。

結婚話を少しずつ両親にも話していた頃、父親が由佳さんと章一さんを呼び出した。「寝ずに考えた結論」を伝えるためだという。ようやく折れてくれたのかと由佳さんは期待したが、父親の話はひどいものだった。

「わが鈴木家にはカネもあるしお前たちが住む家もある。佐々木家にはその用意がない。それなのに娘が佐々木家に入るのはおかしい」

由佳さんは恥ずかしさのあまり絶句。普段は穏やかな章一さんも怒りを堪えてずっと無言だった。その間、父親は興奮ぎみに自説を繰り返し、母親も賛意を示し続けた。

人生初の一人暮らしを経験

「育ててくれた親だけど、やっぱりついていけない、私とは合わないと強く思いました。でも、無理に家を出て彼に迷惑をかけるわけにはいきません。まずは私が一人暮らしをして親との距離を置くことにしました」

章一さんと同棲するのではなく、由佳さんが一人暮らしをするのであれば両親は反対しなかった。むしろ「一人になって頭を冷やしたほうがいい」と勧められたという。頭を冷やすべきなのはあなたたちです、と反論したいのを我慢して、由佳さんは人生初の一人暮らしを経験した。

「少し不安はあったんです。子離れできない親から逃げたいと思いながらも、実は私のほうも親離れできていないのかもと心配でした。でも、一人暮らしをしてよかったと引っ越し1日目で実感(笑)。体がすごく楽になって、気持ちも開放的になったんです」

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