佐々木監督の徹底した「顧客志向」
横から目線とは、相手の特性や立場を理解したうえで、同じ視点から対話するコミュニケーションスタイルのこと。「顧客視点」で「フラットな対話をする」と言い換えてもいいでしょう。
この達人が他ならぬ女子サッカー「なでしこジャパン」の佐々木監督です。2011年女子ワールドカップで優勝した秘訣のひとつが、佐々木監督の「横から目線」のマネージメントスタイルにあるのです。その実践法は「選手は顧客」という文字どおりの顧客志向と、フラットな立場での対話を通じた「プロセスの共有化」にあります。
具体的には、「北京五輪で入賞したい」「ワールドカップでは優勝したい」という目標を立てるのはあくまでも選手です。監督の役割はその目標を実現するためのサポート役なのだそうです。これは前者の「顧客志向」そのもの。
後者は、フロントの要であった澤選手をMFにポジションを変える際、上からの命令ではなく、説明を尽くして本人の了解を得たというエピソードに表れています。また、2011年ワールドカップの決勝戦延長タイムで、選手からの提言を、佐々木監督は「確かにそうだなー」と受け入れて、作戦をすんなり変更したりもします。このように、監督と選手との関係はフラットです。対話を通してプロセス、つまりチームの戦略、練習方法、当日の作戦を共有しているのです。
こうした佐々木監督のスタンスがあるからこそ、薄給にもかかわらず、選手はモチベーションが高く、グラウンドで伸びのびプレーでき、ここぞ!というときに神がかり的な力を発揮できるのではないでしょうか。
これが「上から目線」の監督だったら、どうなるでしょうか?
ありがちなのは、「私は以前、男子チームの監督を20年間やってましてね」と過去の自慢をして、「男性では当たり前にできることが女性ではできない」と嘆くパターンです。つまり、男性は上で女性が下という「上から視点」です。
また、「バルセロナみたいなサッカーをしたい」など、自分のエゴを選手に押しつけてしまいます。まさに、「黙って俺についてこい」的なスタンス。これもまた「上から目線」です。
これでは選手は萎縮してピッチの上で能力を発揮できないでしょう。実際、こうした監督は女子サッカーの世界では、効果的な練習方法や有効なチーム戦略を見出すことができないまま終わるそうです。
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