「パワハラ加害者」と自覚を持てない人たち 「まさか自分が」と皆が思っている

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そのような苦い経験もして、今私が思うのは、ハラスメント加害者になるリスクが少しでもあれば、その人たちは、大きな被害が出たり誰かを深く傷つけてしまう前に、強い当事者意識を持つ機会を持つべきだ、ということです。周囲が見て見ぬふりをしたり、黙認したりして、その機会を与えないのが一番よくありません。

私の知人の女性管理職は、男性部下と仕事の進め方で話し合ううちに口論となったことがあったそうですが、彼が机をたたき、大声を出して立ち上がったときに、大げさではなく身の危険を感じたと言っていました。それ以降は、大柄な男性が急に立ち上がっただけで頭が真っ白になると言って悩み、通院もしていたと聞きました。

上司に相談しても「悪気はなかったのだから」というばかりで、受け止めてはもらえず、孤独感と恐怖心を強く感じたそうです。それもれっきとしたハラスメントだと私は思います。部下や指導する後輩でなくても、一緒に働く誰かにそのような思いをさせたり心身を傷つけたりすれば、傷つけた事実を知り、猛省する機会を持つべきです。そうでなければ、その人がより良いリーダーとなる可能性は奪われてしまいます。もちろん、それで永遠に「×印」がつくのではなく、スタンスや言動が改善されれば、また成長の機会を得られるようでなければいけませんが。

近年、パワハラで会社を訴える報道をよく見かけるようになりました。そのとき不思議だなと思うのは、数々の証拠を持って告発する被害者が多いのに対し、加害者のほうはいかにも無防備で、たとえば自分の発言が録音されていることやメールを追跡される可能性を想像さえしていないかのように感じられること。これは、やはりひとえに加害者になり得る、そのせいで甚大な被害がでるかもしれない、という自覚が足りないのだ、と思えてなりません。

自分を客観的に見るのはなかなかつらいこと

自分を客観的に見る、というのはなかなかつらいことです。私が新人営業担当者の頃、商談シーンのロールプレイングを繰り返しやらされましたが、それをビデオ録画して見せられたことがありました。自分ではうまく切り抜けられたと思った切り返しも、ヒアリングも、冷や汗でびっしょりになるくらい恥ずかしい出来でした。口癖やしぐさの癖、相手との距離感、話す量のバランスの悪さも思い知りました。ロープレ終了後に、先輩や上司たちがしてくれる総評より、自分で自分を客観的に見たときの事実のほうが多くのことを教えてくれたように思います。

「自分は愛をもって部下に接しているから、ハラスメントとは無縁だ」と思う管理職すべてが、“告発される機会”を得るのは難しいでしょうし、そうなったらサラリーマン人生が終わると感じる人もいるでしょう。一度告発されてみるといいと書きましたが、極論過ぎる話だと思われる方も多いと思います。

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