解散後35年「アバの博物館」が大盛況なワケ 仕掛け人が語る「解散後ビジネス」

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アバの控え室は、こうして再現されている(写真:筆者撮影)

アバ・ザ・ミュージアムは、古い美術館のように展示物を透明ガラスの箱で展示する方法ではなく、活動の歴史をもっと身近に感じてもらえるような展示をしている。アバの控え室、レコーディングスタジオ、オフィス、曲を作っていたプライベートな空間なども、かなりのスペースを割いて再現されている。ファンからすると「ああ、あの曲はこうやって、ここでできたんだ」と曲にまつわる物語を想像することができるのだ。

再現されたアバのレコーディングスタジオ(写真:Kimio Okoshi氏撮影)

たとえば「オーディション」というブースでは、実際のレコーディングのブースがあり、そこでヘッドホンをしてカラオケに合わせてアバのヒット曲を歌うことができ、点数が表示される。後でパスワードを入れるとその音源のダウンロードも可能だ。リストの中には映画『マンマ・ミーア!』で、メリル・ストリープが熱唱した「ザ・ウィナー」も含まれており、誰の目も気にせずに大声で歌うことができる。

また、「5人目のメンバー」というコーナーでは、実際に自分がメンバーの1人としてライブ体験ができる。本物のステージ上にメンバー4人がホログラムで登場、その中に交じって一緒にステージに立ち、マイクで声を出して歌うことができるのだ。

この映像も後でダウンロードすることができる。文字どおり、テクノロジーの進化によって実現可能になったシミュレーション体験だ。このミュージアムでは、随所にあこがれのメンバーになったかのようなVR(バーチャルリアリティ)体験ができるコーナーがある。

尊敬、謙虚さを持ってお客様に接する

――運営していくうえでこだわっている点、ポリシーなどはありますか?

「数多くの役割がある中、開かれていて、温かく、尊敬の念を持って従業員たちと接しなければならないと思っています。誰もが不安がなく業務に従事し、上司との意見交換などが自由に行える職場であること、またクリエーティブな意見交換が行き交う環境であることも大事ですね。従業員の話に耳を傾け、真摯に受け止め、よりよい結果のためには改善も行います。あとはお客様が入場された瞬間から、つねにサービスが提供されている状態であることを心掛けています。これは尊敬、謙虚さを持ってお客様に接する日本でのサービスと同じですね。また、来場者全員が平等なサービスを受けられることも重要だと思います」

ストックホルムには70を超える博物館、美術館があり、毎年900万人がやってくる。多くの国立博物館・美術館の入場料は、2016年2月1日からすべての人に対して無料になった(どの展示の入場料が無料になるかは、博物館・美術館の裁量にもよる)。収入が減った分は、減少額に応じて政府からそれぞれの博物館・美術館に予算が配分される。

一方のアバ・ザ・ミュージアムは私営であるため無料ではなく、大人1人250クローネ、日本円で約3500円がかかる。限られた滞在時間で十分楽しんでもらい、「また来たい!」と思わせなければならない。

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