解散後35年「アバの博物館」が大盛況なワケ 仕掛け人が語る「解散後ビジネス」

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――今後の展望や、リピーターを増やすための施策は何かあるのでしょうか?

「ミュージアムの展示は常設のものです。リピーターを増やし、存続させるためには、いくつかの短期間での展示会が必要です。2018年1月には『Guitars of the Stars』 が開催されます。42本にも及ぶユニークな世界中のアーティストのサイン入りギターの展示会です。エリック・クラプトン、ブライアン・メイなどもあります。また“ポスト・アバ”、つまり1982年の解散後から今日に至るまでを紹介、展示する予定ですから、楽しみにしていてください!」

日本におけるエキシビジョンビジネスは成功するのか

では、日本における洋楽アーティストのエキシビジョンビジネスは成功するだろうか。過去のケースを見てみよう。

アバ・ザ・ミュージアムがあるポップ・ハウス・ホテル(写真:Kimio Okoshi氏撮影)

音楽アーティストの博物館では、2000年から2010年まで、さいたまスーパーアリーナ内に常設された「ジョン・レノン・ミュージアム」が10年間で約61万人の入場者だった(現在は契約終了のため閉鎖)。また、ロックバンドKISSの「KISS EXPO TOKYO 2016~地獄の博覧会~」が2016年10月13日から31日までラフォーレ原宿で開催され、メンバーの1人、ジーン・シモンズ氏が来日、オリジナルグッズも発売して話題になった。

また、「デビッド・ボウイの大回顧展」が2017年1月8日から4月9日まで開催され、3カ月で約12万人の来場者を記録して大成功に終わったのも記憶に新しい。こういった海外アーティストのエキシビジョンを開催することで、リアルタイムで体験していた世代はもちろんのこと、新たな顧客へのアピールとなり、新たなマーケットを開拓していくことも可能になるのだ。

「ぜひアバ・ザ・ミュージアムへ来ていただきたいと思います。アバというグループをもっと日本の皆様に知っていただきたいからです。また、ストックホルムまでお越しになれないファンの皆様のためにも、アバ・ザ・ミュージアムが日本へ行き、エキシビジョンを開催することが、少なくとも私たちにできることだと思います」(イングマリー氏)

イングマリーさんは現在、日本でのエキシビジョンの開催を考えている。つねにチャレンジングでポジティブ。メンバーとのコミュニケーションを欠かさず、従業員、ゲスト、すべてに対してオープンでウエルカム。彼女こそが「リアル・マンマ・ミーア!」だ。

今年の12月からは、ロンドンのサウスバンクでも、新たなテーマでアバのエキシビジョンを開催することが決定している。そして近い将来、多くのファンがいる日本でもぜひ、開催したいと強い意欲を語ってくれた。

洋楽ファンにとってはスタジアムなどの大会場に出掛けなければ、海外メジャーアーティストのライブを見ることはできないし、解散してしまったり、亡くなってしまった場合は映像でしか見ることができない。しかし、エキシビジョンならば立体的にそのアーティスト活動に触れることができるし、長期間にわたっての開催が可能なため、気軽に空いている時間に出掛けることも可能だ。主催者側にとってもリスクが少ないうえ、企画に合った場所を選ぶことも可能になる。

今後、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、エキシビジョンビジネスはアイデア次第でますます大きく発展していくだろう。その可能性を「アバ・ザ・ミュージアム」で垣間見たような気がした。

草薙 厚子 ジャーナリスト・ノンフィクション作家

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くさなぎ あつこ / Atsuko Kusanagi

元法務省東京少年鑑別所法務教官。日本発達障害支援システム学会員。地方局アナウンサーを経て、通信社ブルームバーグL.P.に入社。テレビ部門でアンカー、ファイナンシャル・ニュース・デスクを務める。その後、フリーランスとして独立。現在は、社会問題、事件、ライフスタイル、介護問題、医療等の幅広いジャンルの記事を執筆。そのほか、講演活動やテレビ番組のコメンテーターとしても幅広く活躍中。著書に『少年A 矯正2500日全記録』『子どもが壊れる家』(ともに文藝春秋)、『本当は怖い不妊治療』(SB新書)などがある。

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