1970年代にキャッチーなメロディと美しいハーモニーで、世界中を魅了したスウェーデン発の男女4人組ポップグループ「アバ」。1982年に活動を休止してからすでに35年が経過しているが、 アバは現役で活動していたときより、解散してからのほうがビジネスとして拡大していることをご存じだろうか。
2010年、ユニバーサル・ミュージックはアバに対して3億7500万のレコードセールスを記録したという賞を与えた。これはビートルズ、エルビス・プレスリー、マイケル・ジャクソンに次ぐ数字だ。
1992年にリリースされたベスト・アルバム『アバ・ゴールド』は、イギリスのアルバム・チャートでトップ100入りがなんと807週にも上る(2017年10月20日付)。これは男性4人組ロックバンド、クイーンの『グレイテスト・ヒッツ』(795週)より長い期間で、歴代1位だ。
「スウェーデンでは、VOLVO、エリクソン、H&M、IKEAといったブランドが有名ですが、アバもそのブランド産業のひとつだと思います」
友人のスウェーデン人はそう胸を張って話した。
1978年の時点で、アバはスウェーデンで最も急成長を遂げた「産業」となり、年間総収入は1600万ドル(当時のレート、1ドル=195円で約30億円)で、VOLVOよりも外貨を稼いでいたとも話題になった。そのアバが現在でも「産業」であるとは、いったいどういうことか。
筆者はスウェーデンで取材し、その手法に今後のポップ・ミュージック・ビジネスの新しいヒントを見た。そこでこの連載では4回にわたり、アバのビジネスを検証していく。
人気は健在で、再結成のオファーもあったが…
アバの人気は今なお健在だ。これまで何度も再結成のオファーを受けており、2000年には「100日間の世界ツアーを行えば、10億ドル(約1100億円)を提供する」というオファーを受けたこともある。メンバーは拒否したが、これは小国の国家予算に匹敵するほどの金額だ。
そのアバがついに再結成する。とはいうものの、本当の再結成ではなく、最新技術を駆使したバーチャル・リアリティ・ツアーを2019年に行うと発表したのだ。
そのライブは、仮想現実(バーチャルリアリティ)と人工知能(AI / Artificial Intelligence)によるもので、世界初、これまでに想像もできなかった新しい形のエンターテインメントやコンテンツになるという。
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