爆風スランプ末吉氏とJASRAC、すれ違う主張 著作権使用料の「分配」は妥当なのか
音楽教室やライブハウス、街の喫茶店や理容室。音楽の裾野を広げてきた「発信地」が、著作権を侵し、「音楽文化の発展」を妨げるのか。
不透明さはまったく解明されていない
金色に染めた長髪に赤いバンダナ。黒いスーツに身を包んだ壮年ロッカーは、誇張もなく淡々と言葉を紡いだ。盆休み明けの8月18日、ロックバンド「爆風スランプ」のドラマー、ファンキー末吉(すえよし)さん(58)が都内で記者会見を開き、一般社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)の運営が「不透明」だとして、文化庁に調査と改善命令を求める上申書を提出したことを明らかにしたのだ。
末吉さんは作曲家としても「Runner」などのヒット曲を飛ばし、活動の場を中国などに広げ国際的に活躍。「爆風スランプ」活動休止後の1999年からはヘヴィメタルバンド「X.Y.Z.→A」を結成。そのバンド名を冠したライブバーを2009年、東京都八王子市内に開き、運営にも関与した。
ほどなくJASRACから著作権料の支払いを求める書類が届いたが、末吉さんは「徴収後の分配を誰にどう払っているのかきちんと説明してください。そもそも確定した司法判断の基準によれば、店がライブを主催しない場合、店が『演奏』していることにならない」と返答。しかし話し合いや調停でも決着がつかず、JASRACが13年、損害賠償などを求めて東京地裁に提訴した。一、二審とも原告の請求がおおむね認められ、不服とした末吉さんは上告。だが最高裁が今年7月に棄却し、約546万円の支払いが確定した。
「うちでは出演者が演奏曲目を指定された用紙に自分で書き入れ、JASRAC管理楽曲1曲に対して140円を支払って法務省に供託金として預けていました。JASRACは最後までそれを受け取ろうとはしなかったので、先日それも全額引き揚げてきて弁済に充て、店のほうで完済しました」(末吉さん)