「学資保険」を信奉する人が気づかない切り口 「お得かどうか?」の問いが実はナンセンスだ
(3)資金繰りのリスク
15%も増えるならめちゃくちゃお得だ!と感じた人も多いかもしれない。しかし、収入の減少や支出の増加等により手元の貯金が極端に減ってしまうかもしれない。筆者の場合、すでに学資保険に加入していて、子供が新たに生まれたからもう1つ入ろうかと検討している人には、「今入ってるものは辞めなくていいが、さらに入る必要があるかは慎重に考えてください」とアドバイスする。
たとえば満期に200万円の受け取りが可能な学資保険に2人分加入している場合、子供が大きくなれば300万円近いおカネが学資保険に固定されて手が付けられなくなる。それがよいという人もいるが、手元の貯金が極端に減った状況で手の付けられない保険による貯蓄が積み上がる状況は、資金繰りの観点から考えるとマイナスの効果も大きい。
3人分ともなればさらに金額が大きくなる。収入が大幅に減った場合は損得より資金繰りが重要な場合もある。
※契約者貸し付けといって、解約返戻金の範囲内で借り入れは可能だが、当然利息は取られる。
(4)保険機能は大してお得ではない
万が一のことがあれば生命保険の機能もあると説明したが、これはごくわずかでオマケ程度の効果しかない。30歳の男性が55歳までの収入保障保険を月額10万円から同11万円に増やした場合、1万円×12カ月×25年=300万円となり、これは学資保険と同程度の保障だが、その保険料は1カ月当たり215円、年間で2580円、25年間で6万4500円程度だ(アクサダイレクト生命・収入保障2で試算)。
健康体割引や非喫煙割引のある保険ならばさらに安くなる。生命保険が必要であれば別途加入すればいい。
学資保険は良心的?
学資保険から得られる保険会社の利益は非常に少なく、保険代理店で働く知人は学資保険だけしか売れないとお客さんの家まで行く交通費で歩合給が消えてしまうと嘆いていた。
筆者のもとに相談に訪れたご夫婦からも、「学資保険について問い合わせをしたところ、3時間を2回、合計で6時間も保険会社の営業マンがいろいろと丁寧に説明してくれた。それ自体は知らないこともあり役に立ったが、結局当初の予定どおり学資保険だけに加入すると伝えたらすごく悲しそうな顔をされてしまった」とも聞いた。なんとも分かりやすい反応だが、それくらい学資保険は利幅が薄い。
利幅が薄いという意味では良心的な商品ともいえるが、そんな商品を扱う理由も、子供が生まれた家庭は保険の見直しをする絶好のタイミングであり、ドアノック商品といって顧客との接点を作るために採算度外視だからという事情もある。当然のことながら加入する側としてはそういった売り手の事情は関係なく、単純にお得なら加入すればいいというだけの話だ。
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