「学資保険」を信奉する人が気づかない切り口 「お得かどうか?」の問いが実はナンセンスだ
たとえば子供が生まれて学資保険の加入を検討している人がいた場合、すでに家を買っているか、これから住宅購入を検討しているケースは非常に多い。こういった場合、200万円の学資保険に加入せず繰り上げ返済に回した場合、以下のようになる。
借入額 4000万円、返済期間35年、金利1.36%(2017年10月フラット35の金利)
借り入れから住宅ローン減税の終わる10年後に172万円を繰り上げ返済をすると……
短縮する返済期間 1年7カ月
減少する利息 約66.7万円
減少する利息 約30.8万円
※ソニー生命の学資保険の場合、毎月1万4368円、10年間で約172.4万円を支払うと18歳から22歳まで毎年40万円、合計200万円の受け取り、115.9%の戻り率で約27.6万円を得られる(契約者が30歳男性の場合。執筆時点でソニー生命のHPで試算)。
※生命保険料控除の枠を使い切っていない場合、学資保険による節税効果も加算して計算できる場合もある。
同じ172万円を払う場合でも、繰り上げ返済は一括で、学資保険は10年間で分割払いと条件は異なる。また、繰り上げ返済は住宅ローン減税が終わるまで積み立てを継続することで、10年間で得られる利息も考慮に入れると、わずかだがさらに差が広がる。
あくまでこのシミュレーションは住宅ローンを借りている人でなおかつ上記の条件で計算した場合となるが、学資保険の27.2万と比較して、期間短縮型の繰り上げ返済は66.7万円と、お得度で言えば2倍以上だ。
おカネに色はついていない
学資保険でおカネを貯めることと、繰り上げ返済で借金を返済することとは全然違うのでは?と疑問に感じた人もいるかもしれない。もちろん、貯蓄と返済はまったく違うが、手元にあるおカネをどのように使うか?という視点で「教育資金」とか「住宅ローン」といった余計なカテゴリーを取り払えば、いちばん得な使い道を客観的に考えるべきというアドバイスになる。おカネに色はついていないため、バラバラに考えるほうが間違っているわけだ。
単純に繰り上げ返済がお得だから学資保険が不要ということではなく、おカネの使い方はすべてリスクとリターンで考える必要がある。貯金・学資保険・繰り上げ返済をリターンの高い順、リスクの高い順に並べ替えると、以下のような順番になるだろう。
1.繰り上げ返済 2.学資保険 3.貯金
1.繰り上げ返済 2.学資保険 3.貯金
リスクとリターンは比例しているので、ハイリスク・ハイリターン、ローリスク・ローリターンで資産運用の原則どおりとなる。なお、リスクといっても学資保険のリスクは主に保険会社の破綻による「信用リスク」で、繰り上げ返済のリスクは学資保険よりもさらに長期間にわたって手元の資金が減ってしまう「資金繰りのリスク」となる。
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