0→100km/hが1.5秒台!EVはF1より速い レーシングカーにも電動化の波が押し寄せる
もちろんエンジン車をEVに作り替えるのは容易ではない。名古屋大学FEMの最大の課題は、EVの生命線である車載電池だったという。香港企業から破格の150万円で車載電池を調達したが、調子がなかなか上がらない。車載電池と制御部分をつないでいる回路がぷつぷつと切れてしまうのだ。「中国クオリティか……」と嘆いたが、予備の電池を買う余裕はなかった。
不安もあったが、トヨタの技術開発を担う研究機関からのアドバイスなどを受け、ギリギリまで最終調整を行った。
その結果、実走行競技の審査では、エンジン車では出せない加速性能で高得点をたたき出し、単独での初参加でEV部門1位、エンジン車も含む全118チーム中総合4位という快挙を成し遂げた。「1年でここまでやれるとは思わなかった。世界一を目指すには、EVしかない」と、EV部門のリーダー・三久保瑛さんは話す。
排ガス不正問題以降の世界の流れ
こうした動きは学生フォーミュラだけではない。『週刊東洋経済』は10月16日発売号(10月21日号)で「日本経済の試練 EVショック」を特集。世界中の自動車産業で巻き起こるEVシフトに迫っている。世界有数の自動車メーカーが最高の技術を争うモータースポーツの世界でも、EV化の大波が押し寄せている。
「ポルシェがWECでの活動を終了すると聞いて、とても残念に思っています」。今年7月、因縁のライバルであったポルシェが耐久レース世界選手権「WEC」から2017年限りで撤退すると聞き、トヨタ自動車の豊田章男社長は大きく落胆した。
2009年に資金不足でF1から撤退したBMWを皮切りに、近年メルセデス・ベンツやアウディ、ポルシェが旧来のレースから相次ぎ撤退を表明。代わりに2014年から始まったF1のEV版「フォーミュラE」への参戦を表明している。2015年に発覚したフォルクスワーゲンの排ガス不正問題以降、欧州メーカー各社は、EVへの注力をモータースポーツの世界でもアピールしようとしているのだ。
フォーミュラEで争うのは、伝統的な自動車メーカーだけではない。4月のメキシコ戦で2位の中国チーム「テチーター」、次のテスラもいわれる米国のEVベンチャー「ファラデー・フューチャー」などの新興チームも躍進。新旧プレイヤーによる大乱戦が大きな注目を浴びている。
EVフォーミュラカーは排ガスゼロで、騒音も少ないので、世界中の公道を走り抜けることができる。そんな目新しさが、エンターテインメントとしても人気を博すのでは、との期待も高まる。乗用車よりも一足先に、モータースポーツのEVシフトが一気に進むかもしれない。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら