ドイツを悩ます難民積極受け入れのジレンマ 欧州では「反移民の風」が強まっている
――欧州全体の難民・移民への対策をどう見るか。
事態を本当に解決しようとする政治的な意思を感じない。地中海で数千人規模の人が命を落としたというのに。
ダブリン合意が機能していない。これは、欧州連合(EU)の域内に入ってきた難民は、到着した最初の国で難民申請する決まりだ。これで、非EU加盟国と国境を接する位置にある国に、不当な重荷が課されることになった。
ドイツは地理的には非加盟国と国境を接していないという利点がある。ほかのEU加盟国を通ってからではないとドイツに到達できない。(非EU加盟国と国境を接する国からすれば)これは不公平だ。どの欧州政府もこういう状態であることを認識したがらない。
状況は以前よりは沈静化しているが、問題が解決したわけではない。EUの官僚の中で難民の分散に新しい方法を適応しようと動いている人はいない。誰も難民問題に近づきたくないと思っている。
まずは旅に出るのを阻止する必要がある
――どうしたらよいか。
1つには、人々が欧州への旅をする前に手を打つことだ。
人々が住んでいる地域で、再定住の登録ができるようにするのはどうか。誰にその資格があるのか、どこに再定住させるのかなど複雑な要素が絡むが。危険な旅に出ることを防ぐべきだと思っている。旅に出る前の段階で、旅の途中でどんなことが起きるのか、欧州で難民として認められるのはどれぐらいの人かなどを教える教育も必要だ。
メルケル首相のアドバイザーの1人は、毎年、ある国から合法に一定数の移民を受け入れる代わりにその国からやってきたが難民申請を受けられなかった人を帰国させるという案を出した。
――中長期的にはそうした案の実現が可能としても、短期的にはどうか。たとえばイタリアやギリシャは難民・移民の流入に悲鳴をあげている。
難民問題の専門家の中では各加盟国が一定数の難民を受け入れるやり方がよいと言われているが、政治的にはこれについて合意する意思がほとんどない。だから問題が解決しない。イタリアなどに不当な重荷がかかるだけだ。欧州内の難民の配置体制を変えるのでなく、ほかの国・地域にアウトソースする方式が選択されている。
ドイツはトルコと取引をし、国境に人をとどめておけるようにした。私は人道に反する動きだと思っている。トルコがシリアとの国境を閉鎖したら、シリアの人は出られなくなってしまう。同様のことがリビアでも起きている。
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