ドイツを悩ます難民積極受け入れのジレンマ 欧州では「反移民の風」が強まっている
感情面で転機となった事件だ。助けてやっているのに、こんな行動を起こしてしまうのか、と。これがメルケル氏の難民政策にどれだけの直接的な影響があったかはわからない。しかし、国民感情で言えば、転機となった。
また、2015年から2016年、難民たちの収容施設や住宅に右派が放火する事件が随分と相次いだ。こんなことはこれまでになかった。
こうした事件があったものの、ドイツで本格的にボランティア活動が花開いた時期にもなった。学生、中高校生、退職者も含めて、本当に多くの人が難民支援のためのボランティアに参加した。
一方では難民に対する不安感や懸念、時には攻撃があり、同時に難民支援のために多くの人がボランティアに参加しているのが現状だ。
国境に鉄条網を作ったら何が起きたか
――メルケル氏の難民政策は政治的には失敗と言ってよいだろうか。選挙でも多くの議席を失った。
判断は難しい。というのも、もしあのとき、ドイツは難民を受け入れられないとして、強硬策を取ったらどうだったか。国境に鉄条網を作ったらどうだったか。受け入れに向けての圧力は相当強くなっていただろうと思う。
確かに、もっとよいやり方はあったのかもしれないが、ドイツ国民の大半は受け入れは正しかったと思っていると思う。ただし、どこかで停止する必要があった、と。
――100万人を超える人をここ2年ほどで受け入れたことで、国民の生活面で大きな影響が出ているのではないか。
私が見るところでは、大都市圏の人は難民受け入れに肯定的で、地方でも人口が増えることを喜ぶ傾向がある。大都市では公営の低価住宅に入りたがる人が多いので、競争になる。都市圏にはこうした住宅が不足している。
地方では、難民が来ることによって人口減となっている村が活性化されるのではないかという期待があった。しかし、難民・移民たちは都市部に行きたがる。そこに自分たちのコミュニティができているからだ。たとえばここハンブルクにはアフガニスタン人の大きなコミュニティがあり、約4万人が住んでいる。
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