策に溺れた?漂流する「小池劇場」の行方 「排除発言」は大失態だったのか
政治家としての手腕は、細川護熙、小沢一郎、小泉純一郎の3氏に学んだ。
「3人とも、言葉の天才でもありました。細川氏からは民衆を巻き込むことを、小沢氏と小泉氏からは、敵に『守旧派』『抵抗勢力』などと名前を付けて戦い討つ姿を見せつける、劇場型の手法を学びました」(大下さん)
人を巻き込めば大きな渦が起こり、強大な敵に立ち向かい討てば、拍手喝采を得られる。実際、小池氏はこの手法で世論を味方につけ、都知事選に圧勝し、都議選でも大勝した。
「彼女は3人の才覚に惚れ、自分から近づいたと思う。小池氏が時の権力者を渡り歩いたかのように言われるが、彼女が彼らを輝かせた、というのが私の見解です」(同)
小池氏の武器は、テレビを意識した圧倒的な広報戦略だ。日本新党の広報を担当したことを皮切りに、自由党時代には「小沢一郎が永田町で嫌われるワケ」というCMを打ち、小沢氏の不人気を逆手に取ってプラスに転化した。小泉時代には、刺客第1号に名乗りを上げ、対立候補を破った。劇場型と揶揄はされても、都政への関心を集め、都議選の投票率も上がった。
だが、この広報力自体を懐疑的に見る人もいる。東京工業大学教授で政治学者の中島岳志さんは言う。
「人はテレビで繰り返し見る人に好意的な感情を抱くものです。小池氏はどうすればメディアに取り上げられるかを熟知し、スポットライトが当たるほうに行っているだけ。確たる思想を持っているようには見えません。彼女が保守を名乗ることに、違和感があります」
「排除」発言は大失態
中島さんによれば、保守とは人間の知性と倫理の不完全性を認め、風雪に耐えた良識や社会的な経験値や慣習に依拠するもの。伝統の精神を大切に、永遠の微調整を行うもので、保守がリセットをするはずがない。
前出の片山さんは言う。
「知事になってからの動きを見ると、『希望の塾』の設立、千代田区長選、都議選と選挙三昧で、都知事の仕事に身が入っているとは思えない」
ある都議関係者も、「都知事選、都議選を終え、いまは内政に専念するタームなのに、次の城を取りにいくという。国政進出のタイミングを見ると、戦って勝つこと自体が目的化しているのでは」と言う。
そして、戦略的には誤算もあった。
「『排除』発言は大失態でした。都議選の時、都議会自民党を敵に見立てた応用編のつもりで使ったのかもしれませんが、格差社会の中で『排除』という言葉は違う意味で届いてしまった。策士策に溺れる、ということ。『安倍政権を倒すために、みんなで手をつなごう』と言ったほうが、まだましだったのではと思います」(片山さん)