住友ゴムが「ファルケン」の拡販に躍起のワケ ダンロップを欧米で売れない苦境挽回なるか
一方、この15年ほどで世界のタイヤ業界は激変する。新興国での自動車普及に伴い、タイヤを製造するプレーヤーも増加。韓国のハンコックやクムホ、台湾の正新など、新興勢が台頭し、日米欧のトップメーカーの競争力は相対的に低下していた。
特に3番手のグッドイヤーは、低採算の米フォード向け生産や原材料高騰などで、2003年に経営危機が表面化。10%強持っていた住友ゴム株の大半を手放した。一時18%あったシェアは2015年には10%を切った。
この頃、タイヤの主戦場になったアジアなど新興国市場は、住友ゴム・グッドイヤー提携の対象外で、2社が競合する場面が増えていた。2014年には、グッドイヤー側が反トラスト法(独占禁止法)違反を理由に、住友ゴム側に提携解消を要求。両社は国際商業会議所に仲裁を申し立てる一方、水面下で交渉を続け、解消で合意した。
それまで合弁(グッドイヤー75%、住友ゴム25%出資)で展開してきた欧米のダンロップ事業はグッドイヤーの手に渡り、住友ゴムが「ダンロップ」を扱えるのはアジアなど新興国が中心となった。結果として、「ダンロップ」は地域ごとに扱う会社が異なるという複雑な状況が出現した。
名門「リバプールFC」ともスポンサー契約
グッドイヤーとの提携解消後、欧米市場では「ダンロップ」に代わり、独自ブランドを育成せざるをえなくなった。また、住友ゴムがそれまで積極投資を行っていたアジア市場が鈍化する一方、欧米市場の回復が鮮明化。欧米市場のテコ入れはもはや待ったなしの状況となる。
そのカギを握るのが同社が持つもう1つのブランド「ファルケン」だ。同ブランドは1980年代から段階的に吸収した日本メーカー、オーツタイヤのもの。主にスポーツ分野での展開を進め、欧州では一定の認知度を有していたが、このブランドを軸に欧米市場でのタイヤ拡販を進める。
米国では2015年から大リーグ(MLB)のスポンサーとなり、欧州では今夏、英国の名門サッカークラブ、リバプールFCともスポンサー契約を締結。横浜ゴムとチェルシーのようなユニフォームにロゴを入れるメインスポンサー契約ではないため、費用はさほど大きくない。それでも、5度の欧州王者に輝く人気クラブだけにその広告効果は小さくなさそうだ。
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