また、聞き間違いというか、受け止め方を誤解するということもあります。過日、テレビの野球中継で、アナウンサーが、この選手は、いま調子がいいが、その原因は何かと問うと、解説者が「そうですね、まずいのは、腰の構え」と言う。アナウンサーは、動揺しながら「まずいのは腰の構えですか。しかし、これだけ打っているのだから、いいところはないのですか」と聞くと、「だから、まずいのは、腰の構えですよ」と答える。
そうです。「まずいいのは」を、「まずいのは」とアナウンサーは聞き間違えたというか、そのように聞こえたということです。
このように、言い間違いも聞き間違いもあることは、仕方のないことでしょう。もっと決定的なのは、感覚の違いがあることです。人間の感情、感覚というものは無限。ですから、「素直」という言葉も、人によって受け取り方が異なります。「青色」と言っても、自分の考えている青色と他の人の頭の中にある青色とは違います。
今まで、書き記してきた例は、ほんの一部ですが、とにかく、社長なり上司が自分の考えている方針なり理念を正確に伝えること、あるいは、自分の思いなりを100%正確に伝えることは、かくのごとくに難しいということです。
方針を部下に正確に周知するには?
それでは、社長なり上司は、どのようにすれば方針なり理念を社員や部下に正確に周知徹底できるでしょうか。その方法はたくさんあるでしょうが、ここでは3項目を挙げてみたいと思います。
まず大切なことは、社長なり上司が、「1000%の思いを込めて、伝え、話すこと」です。自分の思いや意思は、直接話したとしても真意を伝えるのは難しいのに、これが組織全体、社内全体となると、その難しさはケタ違いになります。すなわち、話は伝わっていくほどに小さくなっていく、あるいは、まったく違った内容に変化してしまうものです。
「伝言ゲーム」という遊びがあります。最初に、ある短い話を次の人だけに伝える。次にその人が、また次の人に伝える。そうすると10人目の人にどういう話かと尋ねると、最初の話とはまったく異なる話になっている。そういう遊びを経験された人も多いと思います。話の伝わり方というものは、そういうものなのです。
この実験を前提に言えることは、社員や部下に100を伝えようと思えば、社長や上司は、いわば1000の思い、熱情をもって話をしなければならないということです。そうでなければ、10人目にはまったく伝わらないということになります。ですから、社長も上司も、自分の話す方針なり、理念なり、指示はそれにふさわしい内容でなければならないのはもちろん、実際にそのような滾(たぎ)るような心からの熱意をもって、言葉を発しなければならないということです。
次に、意思伝達で大事なことは、「繰り返し理念や方針、自分の思いを訴え、話をすること」です。
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