先日もこんな話を聞きました。取引先の経営者の「私なんて」という言葉に、今までの功績を挙げて対応していたところ、それでも「私なんて」を連発するので、今までの失敗例を気にしているのかな、とその件を話題に出したところ、激怒されたという内容でした。どう対応したらよかったのかと悩まれていましたが、対応に取り立てて落ち度はなく、どちらかといえば、その経営者は、ひたすら持ち上げられたかっただけなのではと感じました。「私なんて」は自己承認欲求を満たすために使ってしまいがちなのです。
類似表現で、「私で大丈夫でしょうか」があります。「大丈夫」と言ってもらいたい、もしくは、「あなたが大丈夫と言ったのだから失敗しても責任は取りませんよ」という逃げのようにも感じます。
いずれにせよ、自己顕示欲の強い表現であることの認識が必要です。
3.「あなたとは違う」
これは、相手と自分を差別化する表現で、考え方や仕事のやり方に意見されたときに、使ってしまいがちだと思います。
2008年に福田康夫元首相が退陣記者会見の際に、記者の質問に対して発した「あなたとは違うんです」という言葉が、大きな反響を呼んだのを記憶されている方も多いのではないでしょうか。その年の新語・流行語大賞にもノミネートされたほど、たった一言で、 強いインパクトを与えてしまう言葉なのです。
また、「あなたにはわからない」という表現もあります。相手を拒絶する表現ですが、そもそも、その「わからない」相手に話そうと思う根底には、同意してほしいという欲求が強く存在していることになります。本当にわからないと思っている相手に話を振ることはないでしょうし、話したい気持ちはあるのですから、八つ当たりも甚だしい表現です。
「あなたにはわからない」という言葉を使うくらいなら、その人に話さなければいいわけで、本当にわかってほしければ、わかるように話す努力が必要です。もし、わかってほしくて使うなら、より一層、相手を遠ざけてしまう表現なので逆効果です。
カウンセリングや相談業務の中では、相談者から、このような言葉を浴びせられることがよくあります。話を聞いているカウンセラーが、そう発言しているクライアントより苦しい体験をしているとしても、それを相手に伝えることはありません。嫌な思いをしたとしても仕事の場合は割り切れるかもしれませんが、通常の人間関係では大きなリスクになるでしょう。
自分の言動を振り返ってみる
これらの禁句は、話している表情や声の大きさ、語調からも大きな影響を受けるので、すべての場面で当てはまらないとは思います。
ただ、誰しも言葉の言い回しに癖があります。不用意にこれらの言葉を使ってしまっているとしたら、知らない間に相手から距離を取られたり、信頼関係を築くうえでの障害になっているかもしれません。
何げなく使っている不用意な一言で、相手をイラッとさせていることがあることを知って、自分の言動を振り返ってみてください。快適なやり取りの積み重ねが、相手との関係を深め、信頼を育み、ひいては、自分の居場所の確立に役立ち、あなた自身の「生きやすさに」につながっていきます。
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