武蔵vs麻布、本当に「変」なのはどっち? 髪を緑に染める理由、修学旅行がない理由

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神田:僕がこの本(『「謎」の名門校 麻布の教え』)を書いた目的は、麻布で実践されてる教育というのはほかの学校でもできるんじゃないのかなということで、「それはできる」っていうのが僕の結論で。麻布の先生は、そしておおたさんの本を読んでわかるように武蔵の先生もそうですけど、やっぱ両方の学校は生徒に対してすごく好奇心旺盛なんですね。生徒に対して無我夢中な姿勢があって。

おおた:この2冊は決して「麻布ってすごい学校だろ」「武蔵ってすごい学校だろ」っていうような学校紹介ではなくて、「これって大事にしなきゃいけない教育観だよね。大人のほうが大切なこと忘れてない?」っていうことを伝えようとしているんです。もともと生徒に愛情がない先生ってそんなにいないと思うんですね。もしそう見える先生がいるとすれば、大概の場合、「余裕がない」だけじゃないかな。

神田:うん。それはありますね。

紀伊國屋書店新宿本店で9月16日に開催した「武蔵vs.麻布。本当に『変』なのはどっち」と題したトークショー

先生たちを守ることは、子どもたちをも守ることになる

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おおた:この学校の先生たちはやっぱり余裕がある。こういうトップ校っていわれるようなところじゃなくても、やっぱり優秀な先生ってたくさんいます。こういう学校の先生たちだけが偉いんじゃないっていうふうに、僕はやっぱりいろんな学校を回ってきてそれは感じるんですね。

そこは皆さんにもわかってもらいたくて。それはもう、公立の先生たちも同じだと思います。たぶんね、志は一緒なんですよ。だけど、それができる状況にあるか、できない状況にあるか。で、これをできる状況にしてあげるっていうのが、私たち、社会をつくっている大人の責任なんだぞと。そこで、先生たちを守ることっていうのは今の子どもたちを守ることにつながって、未来を守ることにつながるわけで。

教育に直接かかわっている人じゃなくても、ときどきこういう本を読みながら教育について考えていただきたい。そうなれば、私たちがこの本を書いたかいがあったなというふうに思えるんです。

神田:そのとおりだと思います。

おおた:はい。ちょっと格好つけちゃいましたけれども、この辺にしておきましょうか(笑)。今日はありがとうございました。

おおたとしまさ 教育ジャーナリスト

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Toshimasa Ota

「子どもが“パパ〜!”っていつでも抱きついてくれる期間なんてほんの数年。今、子どもと一緒にいられなかったら一生後悔する」と株式会社リクルートを脱サラ。育児・教育をテーマに執筆・講演活動を行う。著書は『名門校とは何か?』『ルポ 塾歴社会』など80冊以上。著書一覧はこちら

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