本屋の生きる道「本を置きすぎちゃダメだ」 アマゾン全盛時代の「本屋」の生き方<後編>
水代:うちもコピー大歓迎です。日々の地道な努力は当然として、ライバルを昨日の自分に置いて、それにずっと勝ち続けていければ大丈夫だなと思っています。こと本屋に関しては素人ですが、今までやってきたことをブレずにやれば面白くなると思っています。
成毛: もう一つ聞きたいのは街の本屋はアマゾンとの関係をどうするのか、ということ。インターネット書店の売り上げは全体の10%といわれています。リアルな書店の売り上げが下がった分が全部ネット書店に行ったかというとそうではない。問題はアマゾンには万引きがないことかもしれない。書店は大手書店500店舗を数えても、合計すればマイナスの利益です。よくてもかつかつなんですが、万引きによる損耗率がその命運を握っているといわれるくらい厳しい。アマゾンについての思い、ついでに万引き対策についてもご説明下さい。
万引き対策はどうする?
水代:アマゾンのアルゴリズムはすごいです。なぜ僕の気持ちにピシャッとはめてくれるんだろうと思いました。ただ、以前1500の選書を頼まれたときに、検索キーワードの作業を繰り返すと、行き詰まってしまいました。アマゾンのアルゴリズムでは、誰もが面白いと思うようなたくさんの数を提案できないんだと実感したことがありました。
万引きは、本屋素人なのであまり深刻に考えていませんでしたが、セキュリティはアルソックのいちばん厳しいものに入っています。
嶋:僕はデジタルとリアルは使い勝手で決めればいいと思っています。検索ワードがないと決められませんが、欲しいものが決まっていれば、明日届くアマゾンは便利です。リアルな本屋はアマゾンと戦うのではなく、違う役割があります。買うつもりのない本をついつい買ってしまうのがいい本屋です。世界を構成する要素の情報を一気に見るのは、リアルな書店に優位があるのでは。
成毛:最後にお2人ともたくさん読書していると思いますが、今は何を読んでますか。おすすめ本を上げてこの鼎談を締めましょう。
嶋:『ハイン 地の果ての祭典』(アン・チャップマン著、大川豪司訳、新評論)です。チリの南にあるフエゴ諸島にあったお祭りについて書かれた本です。1923年を最後に失われてしまったし、その民族ももう滅びてしまったので、幻の祭りです。
水代:最近読んで面白かったのは『誰がアパレルを殺すのか』(杉原淳一・染原睦美著、日経BP)。話題になっているので読まれた方も多いと思いますが、アパレル業界、書店業界でも、後半見えてくる光はこれからのいいヒントになると。簡単にいうと「いいやつでいるのが、自分を成長させるのに大事だな」ということでしょうか。それと、成毛さんの『本は十冊同時に読め!』(知的生きかた文庫)は読んでいない方がいたら必読です。
成毛:僕は、以下の4冊ですね。すべてノンフィクションですが、読んで損はさせません。『大学病院の奈落』(高梨ゆき子著、講談社)、『歴史の証人 ホテルリッツ』(ティラー・J・マッツェオ著、羽田詩津子訳、東京創元社)、『チャヴ 弱者を敵視する社会』(オーウェン・ジョーンズ著 依田卓巳訳、海と月社)、『こわいもの知らずの病理学講義』(仲野徹著、晶文社)です。
(構成:高杉 公秀)
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