本屋の生きる道「本を置きすぎちゃダメだ」 アマゾン全盛時代の「本屋」の生き方<後編>
水代:僕は「多様な人にどうやって来てもらうか」を第一に考えています。3世代みんなが楽しくなれる書店とはなんだろう、と。自分たちは日本橋浜町3丁目西部町会に所属していますので、町内会長、総務部長など町の皆さんとどうやったらいいだろうか、という話をしています。こうした人たちが面白がってくれるかどうかが大事だと思っています。
嶋:B&Bは最初1万冊でしたが7000冊に落ち着きました。私鉄沿線の本屋は売り場面積が平均30坪で、結構狭いんです。その条件で物件を探したら、下北沢にあった。30坪だと2万冊は置けますが、数を絞ったほうが本に出合いやすいんですよ。ただ、2階なので入りづらい(笑)。怪しい階段を上らなければならないので、上に雑誌の棚を並べて、『少年ジャンプ』『女性自身』『週刊文春』『装苑』『Ginza』などを並べて、どんなジェネレーションにも合った本がある、というメッセージをそこで表現しています。
好きな本の置かれている場所をチェック
成毛:なるほど。注意深く店舗の設計をしていることがわかりました。では紀伊國屋書店やジュンク堂など、巨大な図書館的な本屋さんと、お2人の書店のポジショニングはどう違うんでしょうか。
嶋:ターミナルの大型書店は網羅性で勝負する必要があるでしょうが、同じことをするつもりはない。本屋はどこも一緒だと思っている方もいると思いますが、本来セレクトショップです。同じものを売りながらも、そこでどう差をつけるのかが本屋の技術。大型書店と僕らではプレゼンテーションの仕方が違います。
たとえば、ブックス高田馬場という本屋。コミックの『ベルセルク』とか、うるさいぐらいPOPがあります。店員がマジックを持ち歩いてPOPを書いているような、超アツい本屋です。上野の明正堂ならば、心に残るポエムのようなPOPを書いています。そういう本屋を見つけて、自分の好きな本がどこに置いてあるのかを見てみましょう。ある本屋では阪神タイガース関連本の横に、第1回の本屋大賞に輝いた小川洋子さんの『博士の愛した数式』が置いてあります。あるいは数学者のポール・エルデシュ、素粒子のリチャード・ファインマンの本の横に置かれたり……。置き場所で本屋のセンスがわかります。
成毛:超大型書店から50年前からやっている駅前の書店まで、それぞれが多様性の一部だということですね。
水代さんに聞きたいのは、どうして日本橋浜町に店を出すのかということ。下北沢に比べると知名度は高くない。そもそもどこにあるかも知らない人が多いのでは?
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