本屋の生きる道「本を置きすぎちゃダメだ」 アマゾン全盛時代の「本屋」の生き方<後編>
水代:浜町を知らないと言われるとウキウキしちゃいますね(笑)。日本橋浜町は祭りに運動会、盆踊りなど地域行事がすべて残っていて、ローカルの人たちがたくさんいます。東京駅から2.5キロメートルくらいですが、中央区は子育て支援が厚い区でもある。30~40代の金銭的に余裕がある子育て家庭の移住も結構多い。
また、Hama Houseの前にはカゴメ、呉羽化学、激落ちくんのLECとか消費者に近い大企業のオフィスもあります。そんな環境なので、ぼくらの周りにいる独立系クリエーターの活躍できる要素は大きいと思っています。たとえば、お菓子会社が新しいスナックのパッケージを発注したりといった、活躍の場があるだろうと。
さらに、空間的なすき間もあって、クリエーターたちが移住して来られる土壌もある。働いている人が多様です。そういう人たちがつながったら面白い街になるんじゃないかなと。隅田川や浜町公園もあって、9万人の人が爆音で盆踊りを楽しんでいました。同じようなフェスが出たら屋台も出せるし、DJブースも出せる。けっこう面白い街づくりができるんじゃないかと思っています。
ビジネスモデルのコピーは大歓迎
成毛:日本全国を見渡したときに、「わが町には書店がないけどどうしてくれるんだ」という問題もあります。多様性の「た」の字もないじゃないかと。そこで、北海道では「走る本屋さん」というものがスタートしています。トラックに800冊の本を積んで3つの自治体を回っています。妹背牛町(いもせうしちょう)と、喜茂別町(きもべつちょう)と西興部村(にしおこっぺむら)です。
3つの自治体の人口は、それぞれ1000〜3000人程度です。東京ではコンビニは3000人が商圏なので、コンビニさえ作れないような小さな自治体なわけです。そこに書店を作りようがない。今後も過疎が進み、高齢者数が増えると書店が減っていくでしょう。お2人のやり方がまねされたり、いい意味でコピーされることをどう思いますか。
嶋:なぜビールを売り、イベントをやるか。僕たちは飲食店やイベント屋をやりたいわけではありません。でも、ビールを飲んでいると本を買いたくなったり、作家が来るとその本を買ってもいいかなと思ったり、ということは間違いなくある。つまり、全部新刊書を売るための企業努力の一つなんです。
開業時、書店出身の店員が「なぜ本屋がビールサーバーのメンテナンスやイベントのブッキングまでしないといけないの?」と文句を言いました。でも、毎日イベントやると新刊書が売れるようになるんです。もう一つ重要なのは、それを一人の書店員がやること。飲食担当やイベント担当の人材を別途雇わない方針です。だから、実際に本が売れるようになれば、文句も「いいじゃん」に変わるんです。まだまだ本屋が本を売るためにできる企業努力はあるはず、との思いもあります。今ではB&Bに似た形で運営している本屋さんもありますが、コピーしていただくのは大歓迎です。どんどんコピーしてください。
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