あの綾瀬が「ロケの名所」にのし上がった理由 伊豆急&河津にも学びたい「町おこし」のワザ

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もともと「事故や遅延などを避けるためにロケを許可しない」という鉄道会社が大半であり、「申請したけど、待たされたあげく社内の反対で断られた」という撮影スタッフも少なくありません。いずれも乗客の安全やダイヤの乱れを避けるための判断であり、当然のことなのですが、観光客収入の重要なローカル線は、はたしてそのような正論だけで運営していけるのでしょうか。

現状、快く撮影スタッフを受け入れる鉄道会社が少ないだけに、彼らにとって伊豆急は貴重な存在。また、見落としがちですが、「撮影スタッフやキャストの運賃収入が得られる」というメリットもあります。現在は伊豆急が先んじていますが、今後は成功例を知った各地のローカル線がロケ誘致に乗り出すのではないでしょうか。

とはいえ、伊豆急も発展途上。河津だけでなく、伊東、伊豆高原、熱川、稲取、河津、下田など、沿線の各駅をロケ地観光による町おこしに導けば、観光客の数だけでなく滞在時間も増え、東伊豆全体が活気であふれるでしょう。

ローコストで小さな自治体も挑戦できる

ここで紹介したロケ地を観光に活用するプロジェクトは、「ロケツーリズム」と呼ばれ、観光庁の政策として行われています。

これまでは各地のフィルムコミッションがロケ誘致をするだけで観光資源化はされず、言わば“フロー”の仕事に過ぎませんでした。しかし、ロケツーリズムを進めることで、地元に観光資源が増え、しかも“ストック”することで継続的な活性化につながるのです。

現段階では、ほとんどの市町村が、「ロケ誘致のノウハウがない」「ロケ誘致はできたけど、それを観光に生かせない」「ロケ地めぐりの観光客が来たけど、一時的なもので終わってしまった」という状態に過ぎず、成功例は限られています。

しかし、ロケツーリズムは、現状の建物や自然、住民や物産などを生かすローコストのプロジェクトであり、地元住民、撮影スタッフ、作品ファンの3者がメリットを享受できるすばらしいものだけに、今後も大小を問わず多くの市町村が挑戦するのではないでしょうか。

木村 隆志 コラムニスト、人間関係コンサルタント、テレビ解説者

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きむら たかし / Takashi Kimura

テレビ、ドラマ、タレントを専門テーマに、メディア出演やコラム執筆を重ねるほか、取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーとしても活動。さらに、独自のコミュニケーション理論をベースにした人間関係コンサルタントとして、1万人超の対人相談に乗っている。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』(TAC出版)など。

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