コンピュータの格段進化は突然やってこない 社会が変わるかどうかは結局人間次第だ

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

――そういう意思決定の切り分けができるのも、インターネットやメールのようなデジタル技術があるからでしょうね。

絶対そうです。ところが、その会社の人たちはこう答えたのです。「大きな組織を切り分けて、小さな事業ドメインを作って自由にやることを認めると、これまでわれわれが維持してきた系列企業による企業城下町的なものが崩れてしまう。それが怖い」。テックによってできるようになったことを実際にやるかどうかは結局、人間の感情が左右しているわけです。

大企業にはまだまだ、最終的な意思決定を下すまでに、何段階もの決裁の層を上っていかなければならない組織が多い。こういう組織ではどんなに煮詰めたアイデアも、上に進むごとに味が薄くなって、社長のところではほんの上澄みみたいな案に劣化してしまう。もっと組織をクオンタイズ(量子化、連続的な塊をバラバラの数値として扱うこと)して、その小さな塊ごとに議論をしないといけない。それが「あの人から決済をもらって、次はあの人に」みたいな話が優先されると、いい仕事が生まれません。

あれ、テックと遠くなっちゃいましたが、伝わっていますか?

――テックそのものが社会を変えたり、人間を取り残したりするわけじゃない、それを受け止める人間のあり方の問題だ、と。

そうそう! そういうことです。

ナイキのランニングシューズNike Free Run+のプロモーションとして、「シューズを曲げると音が出る楽器」を開発。製品の屈曲性の高さを表現している(©NIKE Japan , Created by W+K TOKYO / Rhizomatiks)

作品を制作するために、自分で稼ぐしかなかった

――ライゾマが発足したのは2006年。その頃は、日本にもアップルのアイチューンズストアが上陸するなど、ネットとパソコンでできることが急速に広がった時代でした。そういう時代に、どんな構想でライゾマを立ち上げたのですか?

実は何も考えていなかったですね(笑)。僕も真鍋(大度取締役、共同創業者)も当時は食えないアーティストで、「食べていければいい」という感じで始めました。かつてのバブルの頃と比べると、アートへの需要はあっても投じてもらえるおカネの額が格段に小さくなってしまったので、作品を制作するためにはまず自分でおカネを稼がざるをえなかった。それで真鍋がいろんなところから、「海外の広告ではこんなものを使っているらしいぞ」と情報を収集してきたんです。

次ページ食い扶持としてできることはなんでも
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事