帰ってきたサントリーホールは、話題満載だ 改修工事後の企画には工夫がいっぱい

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さて、「室内楽」についての基礎知識が頭に入ったところで、早速“室内楽の庭”たる「チェンバーミュージック・ガーデン」に足を踏み入れてみたい。例年初夏を迎える6月に開催されてきた「サントリーホール チェンバーミュージック・ガーデン」だが、7回目となる今年は、ホールの改修工事の影響によって9月開催。初夏とは一味違う“秋の庭の風景”が味わえそうな予感がする。

開催期間は9月15日(金)から24日(日)までの10日間。サントリーホール館長にして日本を代表するチェリスト堤剛プロデュースによる恒例のオープニングコンサートを皮切りに、怒濤の13公演が用意される。今年はイレギュラーな時期の開催ゆえか、テーマは「ガーデンの名曲散策」という極めつきのわかりやすさ。まさに室内楽のおいしいところばかりを集めたコンサートぞろいなので、クラシック初心者でもすてきな時間が楽しめること間違いなし。

眼の前で展開されるライブ感こそ室内楽の醍醐味

この“室内楽の祭典”を楽しむ醍醐味のひとつが、会場となる「サントリーホール ブルーローズ」にある。通常縦長の奥に配置されるステージを、横長の中央に配置した会場は、客席がステージを取り囲むアリーナのような形状となって臨場感抜群。そこから醸し出される雰囲気は、通常のクラシックコンサートとは一味違う親密感だ。

演奏者の息づかいや表情の変化、目線での会話はもちろん、楽譜をめくるかすかな音や脚を踏み変える音までが渾然一体となって目の前で展開されるライブ感は格別。スポーツにたとえてみれば、バスケットボールの試合を目の前で見ているときに聞こえてくるシューズのキュキュッという軋み音やボールのバウンド音を耳にするような心地よさがここにある。

さながら音楽が立ち上る瞬間のときめきは、花が開く瞬間にも似ているような。まさに「チェンバーミュージック・ガーデン」の意味が感覚的に理解できる。なにはともあれ“百聞は一見にしかず”。まずは室内楽の庭に足を一歩踏み入れてほしい。

サントリーホール小ホールの名称「ブルーローズ」は、ホール運営母体であるサントリーがバイオ技術によって開発した「青いバラ」にちなんで名付けられたもの。「不可能」の代名詞とされてきた「ブルーローズ」で、この秋、奇跡のようなステージに出合えることを期待したい。

田中 泰 日本クラシックソムリエ協会 代表理事

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たなか やすし / Yasushi Tanaka

一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事、スプートニク代表取締役プロデューサー。1957年生まれ。1988年ぴあ入社以来、一貫してクラシックジャンルを担当。2008年スプートニクを設立して独立。J-WAVE「モーニングクラシック」「JAL機内クラシックチャンネル」等の構成を通じてクラシックの普及に努める毎日を送っている。

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