ずいぶん前になるが、筆者は3年前に本連載で「『成長戦略』には、幻想を抱くな」というコラムを書いた。
予想どおり「成長戦略」は株高の要因にはならなかった
日本株市場の分析において、一部市場参加者による「成長戦略が株高をもたらす」という見方は「生産的ではない」と批判的に評した。官の裁量が大きくなる政策は相場のノイズにすぎず、いわゆる「成長戦略」に幻想を抱くことはリスクであると結論づけた。
当時と現在で、筆者の見方はまったく変わっていない。3年経過して「成長戦略」なるものが、株式市場など金融市場に影響を及ぼしたことは、ほとんどなかったように思われる。これらの政策が、マクロ的には大した成果が見込めないと、もともと考えていた筆者からすれば驚きではない。
実際に、2012年から日本株市場では、①米国など海外株市場、②日米の金融政策が決するドル円の動向、③消費増税に対する判断(財政政策を間違えないか)、のいずれかが全体のパフォーマンスを決めていた。「3本の矢」を掲げたアベノミクスについて、「成長戦略」(または構造改革)が最も重要と一部論者らが述べていたように思う。
最近は、そうした方々の声を聞くことが少なくなったが、彼らはどのように総括しているのだろうか? そもそも、成長戦略という掛け声はあっても、具体的な政策メニューはあいまいなので論評することができない場合がほとんどである。
ただ、筆者は、成長戦略をすべて否定しているわけではない。新規ビジネスの障害となっている規制を改めることが望ましいことは言うまでもない。たとえば、2015年6月に成長戦略に関連して「『アベノミクスに成長戦略はない』は本当か」というコラムを書いたが、ここでは、金融緩和による円安とビザ規制緩和で、外国人観光客が大きく増え、「爆買い」がブームになったことを前向きに評価した。
2017年も、なお訪日外国人は増え続けており、百貨店やホテル業界などの景況を支えている。金融緩和政策が、規制改革の効果を顕在化させた一例である。仮にビザ規制緩和だけでは、総需要全体を押し上げるまで効果は高まらなかっただろう。つまり、成長刺激政策の金融財政政策は、「まっとうな成長戦略」と相反するものではなく、規制緩和などの効果を増幅すると位置づけられる。
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