日本経済「年率4%成長」の実像とは?
8月14日に発表された日本の4~6月実質GDP(国内総生産)成長率は前期比年率プラス4.0%と、事前予想を上回る伸びとなった。成長率が久しぶりに高い伸びとなり、お盆でニュースが少なかったことも加わり、日本の経済指標にしては注目された。需要項目別には、個人消費、設備投資の伸びで4%成長のほとんどを説明できる。
ただ、日本のGDP統計は速報段階で統計的なブレが大きく、「瞬間風速」の伸びを示す「前期比年率ベースの数字」を投資判断として使うことは、われわれ投資家の世界ではほとんどない。ブレが小さくなるGDPの前年比の推移のほうが実態をより正確に表しており、以下のGDP統計では前年比の伸びを使っている。2014年の消費増税ショックが長引き日本経済は停滞を余儀なくされたが、2016年初から個人消費の減少が和らぎ、そして輸出が持ち直したことでGDPは下げ止まった。
その後、2016年10~12月に実質GDPは前年比プラス1.7%まで回復したが、これは個人消費、輸出、設備投資のいずれもがプラス成長となったためである。世界経済の復調に加えて、2016年半ばに発動された財政支出拡大、同年9月の日銀によるイールドカーブ導入による金融緩和強化の双方の効果が現れた。その後、2017年1~3月(同+1.5%)、4~6月(同+2.0%)と、過去9カ月でみて1.5~2.0%の堅調な成長率となっている。前期比年率の数字が示す「年率4%成長」は、経済が加速したというよりは、1%台半ばから2%付近まで4~6月に成長率がやや高まったというのが実情である。
4~6月の成長率を底上げしたのは設備投資で、前年比プラス5.8%と消費増税直前の2014年1~3月以来の伸びに高まった。速報段階での設備投資の数値の信頼性は高くないが、2016年末以降の企業業績の改善が、日銀短観などでの事前計画が示していたとおり幅広い設備投資拡大をもたらしているとみられる。2016年半ばまでのインフレ停滞を受けて企業のインフレ期待は低下したが、その後インフレ下げ止まりと財政金融政策への期待によるインフレ予想の上昇が、企業の支出性向を高めた。脱デフレを後押しする金融・財政政策が企業の支出を刺激することで、自律的な景気回復の経路が強まりつつある。
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