日本経済にはこの秋以降、円高リスクがある 世界経済は利上げに耐えられるほど強くない

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これらは、アベノミクスがもたらした労働市場改善による、「ブラック企業の淘汰」の延長線上の動きといえる。さらに、外食産業などでは人手不足に直面して、省力化投資を増やす動きが最近増えていると報じられている。労働市場の需給改善が、低生産性ビジネスの縮小、設備投資誘発の2つの経路で日本経済の供給サイドを強化している。霞が関の利権とセットになった産業政策よりも、大きな効果を持つ成長戦略が実現しているといえる。

以上を踏まえれば、日本経済は、金融・財政政策の後押しで総需要を高めて、完全雇用を実現する過程にある。それと同時に、潜在成長率をはじめ経済の供給側を底上げする効果も表れている。このプロセスが今後続けば、賃金上昇率は緩やかながらも高まり、これが個人消費を後押しして、景気回復の足腰を一段と強める余地がある。

日本の4~6月期の経済成長は他の先進国とほぼ同じ

一方、日本の4~6月経済成長を、他国と比較してどう位置づけられるかをみてみよう。米国(前年比+2.1%)、ユーロ圏(同+2.2%)、イギリス(同+1.7%)いずれの先進各国も4~6月実質GDPは2%前後の成長率で、日本はほかの先進国と同様のパフォーマンスである。世界経済全体が安定し、かつ財政金融政策の支えがあったがゆえに、日本は他国同様の成長を実現した。その意味でも、「年率4%の高成長」という表面上の高い数字は割り引いてみる必要がある。

なお、4~6月の経済成長率の加速がみられたのは新興資源国の一部で、たとえばカナダが前年比プラス4.6%(1~3月同+3.3%)、ロシアが同プラス2.5%(同+0.5%)と伸びが加速、またブラジルは未発表だが前期(-0.35%)のマイナス成長からプラス成長に戻ったと推計される。一方、中国、韓国、東欧(ポーランド、オーストリア、ルーマニア)の4~6月成長率は、1~3月からほぼ変わらない伸びを保った。4~6月の世界経済は、2014年から厳しい落ち込みとなっていたブラジル、ロシアなどの正常化により、前期からやや伸びが高まったということになる。

では、肝心の7~9月以降はどうか。4~6月までの成長には海外経済の復調が日本経済の支えになっていたが、引き続き米国をはじめとした世界経済の動向に左右されるだろう。米国経済指標をみると、7~9月は年率2%を上回る成長を保っているとみられ、現時点では強い懸念は不要である。ただ、これまでのFRB(米連邦準備制度理事会)の利上げや金融機関の融資態度慎重化で、自動車や住宅部門の一部で減速の兆しが見られる。ドナルド・トランプ米政権の政権基盤が揺らぎ、大規模な財政政策が実現する可能性が低下する中で、これまでの引き締め政策が米経済の成長にブレーキをかけるリスクがある。

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