ミスター円「インフレ2%は無理、でも大丈夫」 低成長を明るく楽しむ「ポルトガルの教訓」

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現在の日本経済の低成長は、不調でも停滞でもない(撮影:尾形文繁)

内閣府は14日、2017年4~6月期の国内総生産(GDP)は6四半期連続で増えたと発表した。今年度は前年度比1.8%増となる見通しで、本格的な経済回復を期待する声が高まっている。

しかし、財務官として辣腕を奮い「ミスター円」の異名を取った榊原英資氏は、「日本は構造的な低成長期に入っており、政府のインフレ目標2%の達成も無理」と話す。

そして、「もはや高成長は望めない」としながら「悲観する必要はない」という独自の主張を著書『「今日よりいい明日はない」という生き方』にまとめた。今回、榊原氏にその概要を解説してもらった。

物価上昇2%の達成はなぜ無理なのか

『「今日よりいい明日はない」という生き方: 低成長時代を豊かに楽しむ知恵』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

2013年4月以来、日銀は異次元金融緩和を続け、インフレ率2%をターゲットにしてきましたが、いまだに達成されていません。私の見るところ、物価上昇目標2%は高すぎました。日本を含めて、先進国では、もう物価上昇目標2%は高すぎるのです。

なぜなら、日本を含めた先進国の経済は成熟期に入ってきているからです。

日本経済の安定的な成長は、1990年代前半に終わりました。1955年から1973年まで続いたかつての高度成長期には、実質GDPの平均成長率は9.1%にも達していましたし、それに続く、1974年から1990年も実質成長率は平均で4.2%と安定した成長を続けました。

しかし、1991年から2011年までの20年間、平均成長率は0.9%と低迷し、「失われた20年」と呼ばれています。成長期を懐かしみ、あの頃に帰りたいという思いからでしょう、経済界も政府も、日本経済を何とか昔のような成長軌道に乗せたいと考えているようです。

でも、これは無理というものでしょう。なぜならば、現在の低成長は日本経済の「停滞」や「不調」などではなく、日本経済の「成熟」であり、ごく当たり前のことにすぎないからです。

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