ミスター円「インフレ2%は無理、でも大丈夫」

低成長を明るく楽しむ「ポルトガルの教訓」

経済成長率が低いのは日本だけではありません。ヨーロッパの先進諸国はいずれも1%前後の成長率であり、この20年間の日本の成長率とあまり変わりはありません。こうしたヨーロッパ諸国の成長率の低さを見ても、経済が成長段階から成熟段階に入った国において、1%前後という成長率は不調でも停滞でもないとわかります。

成熟社会である日本では、いくら金融緩和策を行っても内需の大幅な拡大は期待できず、物価の大きな上昇は難しいと考えられるのです。

また、日本の低いインフレ率は構造的なものであり、その証拠に先進国のすべてでインフレ率は下がってきています。その原因はグローバリゼーションの進展です。先進国と新興市場国や途上国との経済交流が活発になることで、後者の物価レベルが引き上げられると同時に、先進国の物価レベルが緩やかに押し下げられてきているのです。

かつては一国の金融政策だけである程度は物価をコントロールできました。金融を緩和すれば物価が上昇したのです。けれど、グローバリゼーションの時代、各国間の交流が盛んになり、1つの国に対するほかの国々からの影響が大きくなってきたため、自国の金融政策だけで物価やGDPをコントロールすることは難しくなりました。

また、構造改革による経済成長に期待を寄せる方もいらっしゃるようですが、実際には実益が出るような改革の余地はほとんど残っていないというのが私の実感です。

グローバル資本主義の終焉

さらに、もう一つ、インフレ率が上がらない理由があります。エコノミストの水野和夫氏は、グローバリゼーションとデフレーションには密接な関係があり、現在の世界は、中世以降で4回目のデフレ期に入っており、これから100年はデフレ傾向が続くだろうと予測しています。

事実、1990年代の平均とここ5年の平均を比べると、先進国のすべてでインフレ率が低下しているだけでなく、中国でもインフレ率は下がっていますし、ベトナム、タイ、インドネシアなど東南アジア諸国でもインフレ率が下がっているのです。

どうやら、インフレ率の低下は世界的な現象だと考えてよさそうです。

かつてアメリカの財務長官を務め、現在はハーバード大学の教授をしているローレンス・サマーズは、こうした世界経済の状況を「セキュラースタグネーション」といっています。つまり、世界経済は中長期的な停滞局面に入ったということです。2008年にリーマンショックが起こり、その後、景気回復に向かったわけですが、そのスピードや力強さはかつてより弱いと彼は見ています。

このように、グローバリゼーションの進展している現在、先進国である日本の物価は、途上国などの物価に引きずられる格好ですから高い上昇は難しいのです。さらに、グローバリゼーションにより世界的なデフレの時期に入っているとすれば、日銀がいくら異次元金融緩和を続けてもインフレ率2%を達成するのは無理というものでしょう。

今の日本は、デフレ傾向を問題にするよりも、むしろ、世界的な低成長期に入っていることを認識して、そのための対策を講じるべきでしょう。

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