中小企業の「人手不足倒産」が広がりつつある 2017年上期の件数は4年前の2.9倍に
「人手不足が原因の倒産件数」は4年前の2.9倍に増加――。人手不足の問題が各方面で顕在化する中、そんなショッキングな数字を帝国データバンクが7月10日に公表した。しかし、データを取りまとめた同社・産業調査部の加藤達朗氏は、この結果を比較的冷静に受け止めている。
「事実として、足元の人手不足による倒産件数は4年前の2.9倍に増えている。ただ、全体の倒産件数に対する比率はまだ大きいとはいえない」
同社のまとめによると、2017年は上半期(1~6月)の人手不足による倒産件数は49件と、前年同期比で44.1%増となった。集計を開始した2013年以降では初めて40件を超え、2半期連続で前年同期よりも増加した。だが、同じ時期の全体の倒産件数が4247件であることと比べると、その割合は1割にも満たない。
業種や規模を見ても、影響は拡大しつつある
とはいえ、今回の結果を楽観視できるかといえば、そういうわけでもない。「母数が少ないながらも、業種の偏りや倒産する会社の規模に変化が出てきている。人手不足の影響が広がりつつあるのかもしれない」(加藤氏)。
負債規模別の件数を見ると、2016年上半期は「1億円以上5億円未満」が14件だったのに対し、2017年上半期は23件に増加。「10億円以上」もゼロだったものが、今回の調査では5件になった。人手不足によって倒産する企業の規模は大きくなる傾向にある。
一方、業種別で見ると、調査開始以降の4年半の累計では「老人福祉事業」が19件で最多。「道路貨物運送」の17件、「ソフトウエア受託開発」の16件がこれに続く。いずれも介護士免許や大型自動車免許など特殊な資格やノウハウが必要な業種であり、こうした条件が付くと人材の募集・採用が難しくなる傾向があることが読み取れる。
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