無難な仕事人生から「脱ける」ための考え方 はあちゅう氏が自身の経験から語るヒント
欲しかった肩書を手に入れたのに、モヤモヤしてた25歳
――25歳で新卒入社した電通からトレンダーズに転職していますが、はあちゅうさんにとって当時はどのような時期でしたか。
私が25歳を迎えたのは、東日本大震災があった2011年。震災当日、私は電通の会議室で、新しい広告のプレゼンをしていたんです。ビルがものすごく揺れて、ふと窓を見たら、お台場方面から煙が上がっている。昨日までの日常が無くなっていくことを実感し、それまで一つ一つ大切に積み上げていったものが一気に崩壊する不安を覚えました。その年のうちに転職をしたのですが、震災が1つの契機になったのは確かです。
――電通ではコピーライターとして活動されていましたが、大きなクライアントのコピーを書きたい、賞を取りたいなどの夢はありましたか?
ありました。ただ、今振り返ると、私はコピーライターという肩書に目がくらんで、賞をとったり、目立つ仕事をすることをゴール化していたようにも思います。本来はその先に仕事を通してどんな社会を実現したいか、ということがなければいけないと思うのですが。
自分が本当にやりたいことから目をそらして、数ある肩書きのなかから自分に合いそうなものを選んだせいでそうなってしまった気がします。だから、コピーライターという夢が叶ったその先に何があるのかが本当の意味では分かっておらず、モヤモヤとした気持ちを抱えていました。
正直なところ、電通という大企業に安住していたところもあったし、その中でぬくぬくとしているのが楽だとも思っていたんです。楽で、見栄えもいい肩書きも手に入れたのに、心の中が常にトゲトゲしているのはなぜだろうという葛藤がありました。