──それほど誤解だらけなのですか。
共著の『嫌われる勇気』は今月豪州で英語版が出て、日本、韓国、台湾、中国、タイそれに豪州の合計で、刷り部数は420万を超えた。このヒットを受けて、アドラーの関連書が矢継ぎ早に出版されたが、必ずしも原典を読まず、内容をきちんと知らずに書かれた本が少なくない。それを正していきたいとの思いがある。
──主な著作15冊のうち、この本では13冊の内容に触れています。
アドラーは文章を書くことに執着がなく、仲間や患者たちと話すことに関心があって、編集者やライターがまとめた著作が多い。
アドラー心理学は未来を見る個人心理学
──第1章は全体を俯瞰できる『個人心理学講義』です。
彼自身がアドラー心理学と言ったわけではなく、欧米ではアドラー心理学ではなく「個人心理学」の名称表現が一般的だ。
──個人心理学?
個人はアドラー心理学にとって重要なキーワードだ。理性と感情、意識と無意識、精神と身体といった具合に、分割して二元論的に考える心理学が一般的なのに対して、アドラーは個人は分割できないとして、全体としての人間を扱う。
卑近な例で、たとえば「ついカッとして」という表現が使われ、感情だけに責任を押し付けがちだが、そういう立場をアドラーは取らない。目的があって、全体としての人間はその達成のために怒りの感情をつくり出す。そういう意味で、怒りの感情がさせたものとの責任転嫁はできない。感情をつくり出しているのは一個の自分であり、責任の所在は感情だけにはない。
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