「アドラー心理学」を学べば生き方が変わる 過去のトラウマはなく人はつねに変わりうる

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──個人の独自性という視点もあるのですね。

個人をまとめても意味がない。一人ひとりの個性を記述的に扱う心理学という意味合いになる。つまり、誰と特定できない一般的な分析に終始しないのが個人心理学の特徴だ。個人心理学という表現に内実が込められている。

──目的論的なとらえ方を採り、フロイトとたもとを分かった……。

科学では原因があって結果があると考える。

こんな日常の例はどうだろう。喫茶店でいっちょうらの背広が汚された。カッとして店中に響き渡る声を出す。この際、汚されたのが原因で、大きな声はその結果だと見るのが普通。そう考えず、アドラーは大きな声を出すことで、目的を達成しようとしていると考える。相手に謝罪をさせる、あるいはクリーニング代を出させるとか……。その目的があって大きな声を出したと。

──目的があって行動がある?

目的がわからないと、行動の意味を理解することはできない。

現在生きづらいと思っている相談者がいれば、とかく過去にさかのぼって原因を探る。治療者は「あなたのせいではない、育てられた環境の中では仕方がなかった」と。その診断で、相談者はある程度安心できるかもしれない。だが、それでは決して生きづらさは解消しないし、問題は解決されない。

症状は何のためにつくり出されたのか

岸見 一郎(きしみ いちろう)/日本アドラー心理学会認定カウンセラー・顧問。1956年生まれ。京都大学大学院文学研究科博士課程満期退学(西洋古代哲学史)。89年からアドラーの個人心理学を研究。著書にアドラー著作の翻訳書のほか、共著『嫌われる勇気』がミリオンセラー(撮影:ヒラオカスタジオ)

──『人はなぜ神経症になるのか』のような著作もありますが。

タイトルに「なぜ」とあると原因論と思ってしまうかもしれない。アドラーは過去の原因で症状が出ているとは考えない。症状は目的があって患者がつくり出すものと考えた。それは多くの場合、周りの人の注意を引くためだ。症状がよくなると親の注目度が薄れる。そのままでいたい子どもは、医学的には何の問題もないのにぶり返す症状を起こしたりする。

そういう子どもが大人になると、自分が直面した課題から逃れることを狙って症状をつくり出し、また何のためらいもなく別の症状を呈しもする。症状が何のためにつくり出されたか、目的がわかれば治療の方向が見えてくる。この症状がなくなったら何をやりたいか、この症状のためできなくなったことはあるかと問うと、その答えは患者が回避しようとしている課題であることが往々にしてあり、突破口が見つかる。

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