生配信のギフティングに熱狂する人達の心理

前田裕二社長「現代で完成品はいらない」

インターネットが登場するまでは、芸能界には上半分、つまりファンと距離を保った、ミステリアスな「偶像」モデルしか存在しませんでした。その中でもファンが多い人だけが芸能人になれて、ファンが少なければまったく日の目を見なかった。「偶像」化戦略だけだと多くの人は売れないタレントになってしまうのですが、SHOWROOMはまず身近なファンを増やしていくことで、足場を固める場を提供しているわけです。

ただ、「偶像」でかつファンが多い人が「身近」のエリアに下りてくる形が、当然ですがいちばんファンが増えます。オンラインサロンなどでファンとの接点を増やしている、キングコングの西野亮廣さんがよい例です。

「偶像」と「身近」で揺らぎをつくる

ずっと「偶像」のエリアにいて、距離が離れすぎることはよくないのですが、「身近」なファンのところだけに居続けたら、発展性には限界があります。ある程度の人気を獲得して足場をつくったら、「偶像」に近づく努力もする。ファンビジネスは、「偶像」と「身近」の揺らぎが大切で、ここを揺さぶることで表現者としての価値を引き上げていく必要があります。

――バランス感覚が重要なポイントなのですね。今後は「偶像」モデルのみで突き進む国民的なスターは、輩出されにくくなるのでしょうか?

もちろん、たとえばB’zや矢沢永吉さんのような、ファンにとって絶対的な存在となるスーパースターは、これからも出てくることに変わりはありません。しかし、再現性を重視するのであれば、「身近」でかつエンゲージメントの高いファンが多い、小宇宙のようなコミュニティをつくる戦略が欠かせなくなるでしょう。

テレビ番組に起用されたり、CMの出演が決まるということはスポンサーの意向であって、自分で決めることはできません。純粋な努力と関係ないところで決まる力学も働いてしまう可能性もあります。しかし、ライブストリーミングで直接つながっているファンは、努力すればずっとついてきてくれて、エンゲージメントを維持することができます。

――「深いエンゲージメント」を重視するという考え方は、ライブストリーミングに限らず、あらゆる商品のマーケティングにも同じように通用するように思います。

これは広告でもそうで、今は供給側の論理に立ったプロモーションがあまりにも多いと思っていて。すごく格好いい公式イメージ動画を作ってブランド広告としてテレビで流しても、良い意味でのフィクションとしてのプロモーションとしては残ると思いますが、商品の売り上げにつながるかといえば、もはや効果はわかりません。

では次はソーシャルだ、ということで多数のフォロワーを抱えるインフルエンサーに依頼して、1回10万円でSNSでPR投稿をしてもらったとします。しかし、それが単なる宣伝で、フォロワーから見て「うそっぽさ」を感じさせるものであったら、たとえそのインフルエンサーにフォロワーが10万人いたとしても、商品購買としては動きません。

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