生配信のギフティングに熱狂する人達の心理 前田裕二社長「現代で完成品はいらない」
アメリカで見た、中国の巨大サービス
――外資系投資銀行から転身して、ライブ・ストリーミング・サービスを日本で始めようと思ったきっかけは、どのようなものだったのでしょうか。
前職時代にニューヨークで勤務していたとき、中国で展開されているYY直播 (ワイワイ・ジーボー)というライブ・ストリーミング・サービスの存在を知ったことでした。この会社は、2011年末にYY Inc.としてNASDAQに上場したのですが、年商で数百億円、時価総額で1兆円近くつけていた時期もあって、爆発的な収益性がありました。
その中身を見てみたら、ほとんどがパフォーマーに対する観客からギフティングだったのです。私自身、幼い頃に路上で弾き語りをして道行く人からギフティングをいただくことで生計を立てていたこともあり、強い関心を持ちました。
また、日本にはAKB48が活躍して実績を作っていて、アイドルに対して直接課金する消費文化がすでに存在したことも大きかった。コンテンツの対価としてではなく、純粋に「応援したい」という感情で課金するということが現実世界で起きていたため、これをオンラインの市場にリプレースできる下地がありました。AKB48はある意味、選ばれた人たちの世界ですが、オンライン・ストリーミング・サービスであるSHOWROOMはどんな人に対してもチャンスが開かれています。
――SHOWROOMを初めて見たときは、女の子がとりとめもない「おしゃべり」をしているという印象で、これがコンテンツとして成立するのか、と軽い衝撃を受けました。しかし、「ギフティング」と呼ばれる課金は年々額を増やしていますね。
それは「クオリティ」の中身が、かつてと今では大きく変わってきているということだと思います。現代において重要なのは、完成度ではありません。
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