神奈川の名門男子校で毎日続く珍風景の意味 栄光学園は半裸のラジオ体操で生徒を育てる

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でもやはり生徒の間からも教員の間からも「なんで中間体操なんてしなくちゃいけないんだっけ?」という疑問は常に上がってくる。

「6年間毎日ラジオ体操をやれば健康増進には良い影響があるでしょう。でも中間体操をやる意味はきっとそれだけではありません。最初はやっていることの意味がわからなくても、毎日参加する中で、自分でそこに意味を与えていくことが大事なのだと生徒たちには説明をしました」(望月校長)

実際に中間体操にどんな意味を付与し、6年間やり通した後に何が残ったと思うか、卒業生でもある壱岐教諭に尋ねた。

「私自身は、ほかではあり得ない『お祭り』みたいなものだととらえていました。自分がこの学校の一員であることを毎日確認しているような気分に、最後のほうはなっていました」(壱岐教諭)

目的は誰かから教えてもらうものではない

栄光学園では中間体操のほかに、授業のたびに行う瞑目、江ノ島から小田原まで約30kmを歩く「歩く大会」、電気も通っていない山小屋での滞在などを実施している。これらを行う目的も、誰かから教えてもらうのではなく、自分たちで付与しなさい、それによって何を得るのかは自分たちで決めなさいというスタンスだ。

「これは、われわれが大切にしているキリスト教の信仰にも通ずるところです。神からの働きかけは、人や自然や出来事を通じて行われ、多くの場合我々はそれにあとから気付くのです。生徒たちには、神から自分への働きかけに、今すぐでなくていいから、今後の長い人生のどこかで気付いてほしい。それに気付けるような心を育んでほしいのです」(壱岐教諭)

人生において、「何のためにこんなことをしているのか?」と思うことはたびたびやってくる。本当に大事なことの意味は、大概あとになってからわかる。そんな人生訓を、栄光学園の生徒たちは、毎日の中間体操を通して少しずつ学んでいるのかもしれない。

建築家・隈研吾さんが監修した新校舎(写真は筆者撮影)
おおたとしまさ 教育ジャーナリスト

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Toshimasa Ota

「子どもが“パパ〜!”っていつでも抱きついてくれる期間なんてほんの数年。今、子どもと一緒にいられなかったら一生後悔する」と株式会社リクルートを脱サラ。育児・教育をテーマに執筆・講演活動を行う。著書は『名門校とは何か?』『ルポ 塾歴社会』など80冊以上。著書一覧はこちら

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