木村屋の「クリームパン」が売れている必然 袋パンで「食品添加物不使用」に挑んだ

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大手チェーンのPB商品として売り出した新製品は2016年7月から2017年2月まで販売したが、その後発売中止に。しかし、その間、木村屋は独自商品として4種を不使用にした「ココアミルクパン」「抹茶ミルクパン」を開発。2016年10月から1月までテストマーケティングを行い、手応えを得ていた。

「すごくシンプルだね」「こんなのが欲しかったの」という客の反応もあり、福永副社長は「シンプルパンが袋パン事業の柱の1つになる」と確信。今年3月のブリオッシュ風クリームパン発売に踏み切った。製造に手間がかかるシンプルパンだが、その利益率は袋パンの中でも随一という商品に成長している。

現場にはびこっていた非効率な体質

シンプルパンが成功した背景には、従来の袋パン事業を根本的に見直したことがある。同事業を率いる福永副社長は、生命保険会社を経て、製造業のコンサルタントに転じた経歴の持ち主で、木村屋に入るまでパンの知識はゼロだった。が、だからこそ、見えてきた問題がたくさんあったのである。

高度成長期に大量生産のシステムを整えた中堅の製パン会社には、町のパン屋だった時代のやり方を残すところが少なくない。木村屋總本店も、そういう会社の1つだった。ブランド力もあり、売り上げも伸びていたが、実は赤字状態が続いていた。

その理由は明確だった。製造現場は、よく言えば職人風で、悪く言えば非効率の塊。たとえば、パンの作り方はマニュアル化されておらず、後輩は先輩の背中を見て覚えるのが当たり前。品質をそろえるよりも、目先の納期に間に合わすことが優先されていた。「非効率でも一手間かけておいしいパンを作りたい」という気風もあった。いわば採算度外視状態だったのである。

福永副社長はこのうち、「おいしいパンを作りたい」という強い気持ちがある社風に注目。これを大切にしようと考えた結果、生まれたのがシンプルパンシリーズだ。多くのメーカーでパン製造の機械化が進む中、同社は依然、カスタードクリームを詰める作業などは従業員が行っている。これが大手メーカーとの差別化につながっているのだ。

クリームパンを作る従業員。カスタードを詰める工程が手作業で行われるのも木村屋の特徴。ここで大手との差別化を図れている(撮影:尾形文繁)
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