木村屋の「クリームパン」が売れている必然 袋パンで「食品添加物不使用」に挑んだ
木村屋が、4つの材料を使わないシンプルパンを開発するきっかけは、2年前の大手チェーンとの共同商品開発だった。「食品添加物不使用をやろう」「マーガリンやショートニングも抜こう」というアイデアが出てきたのは、このとき苦戦していたコンビニ・スーパー向け事業を見直す中で、木村屋の強みが一手間かけておいしいパンを作る企業風土にあることがわかったからだ。
実は乳化剤、イーストフードの不使用は、業界2位の敷島製パンが「超熟」シリーズで先行している。しかし、マーガリン、ショートニングの代わりにバターを使用する大手・中堅製パン会社は、当時は皆無。業界の常識を打ち破り、機械で大量生産するパンで、食品添加物を抜き、バターを使うのはたやすい道のりではなかった。
現場からも「無理に決まっている」
何より苦労したのは、クリームパンに入っているカスタードクリームなどフィリング(詰め物)を製造している専業メーカーに協力してもらうことだった。乳化剤を使わなければ生産効率は落ちるし、そもそも生産工程を見直さなければならない。メーカーが渋るのも当然だ。が、袋パン事業の責任者である開発部の杉山昭彦統括部長は、丁寧に時間をかけて説明を繰り返して協力を仰ぎ、最終的には共同開発のような形で生産工程を変えてもらった。
一方、パン種を作る木村屋の工場でも、同様に製造工程を見直した。4種の材料を不使用にするのは、今までの大きなロットでは不可能。順番や温度管理、ミキシングのスピード、時間、最終的な仕上がり温度といった工程をひととおり見直し、手間はかかるが実現可能なやり方を見つけ出した。
未開拓の取り組みは、当初現場からも「無理に決まっている」という声が上がった。それでも商品化を進めたのは、シンプルパンがおいしかったからだ。手作りパンのような素朴な味わいに、開発の総指揮を取ってきた福永副社長も驚いた。
機械生産するパンに食品添加物を使うのは品質を安定させる目的もあったため、「パサパサになると思っていたのに、いつも以上にしっかり味がして柔らかく、しっとりしていた」と福永副社長は言う。杉山統括部長も「味も風味も非常によくなった」と説明する。
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