党首を辞めさせる意味、なぜ任期が必要か?
次に、政党の党首はいつ辞めるのかという問題を考えてみよう。
いちばんわかりやすいのは、選挙に負けた政党の党首が責任を取って辞任する場合だろう。しかし、どの程度の敗北で辞任すべきという、いわゆる「勝敗ライン」はどのようにでも設定できる。また、参議院のような第二院の選挙結果をどう理解するかも、見る人によって異なりうる。
そこで、党首の任期を選挙と連動させるという発想が生まれる。任期切れは、選挙に敗北した政党にとって、党首自らが進退を明らかにするきっかけであるとともに、批判勢力が新たな党首を押し立てるチャンスとなるからだ。
事実、クロスの研究では、党首の任期を選挙後に切れるよう設定している政党が多いことが明らかにされている。
日本では、しばしば選挙の前に、新しい「選挙の顔」としての党首が望まれることがある。しかし、政策の提案を中心に長い期間をかけて準備した党首が選挙を戦い、その成果を党員が評価するという流れが、より一般的なのだ。
選挙と独立に任期を設定する政党もあるが、任期切れが近づくことでしばしば党首のリーダーシップが制約されることになる。たとえば、政権党の党首である首相が大きな改革をしようとするとき、反対する与党議員が(内閣不信任ではなく)党首選挙によって党首=首相を牽制しようとするのだ。
自民党や民主党が、自ら政権を握るさなかに総裁選挙や代表選挙を行うのは、この任期切れが原因である。
もちろん、リーダーに対するチェックは非常に重要で、その機会を提供する任期の設定には意味がある。
だが、短すぎる任期がリーダーの行動を大きく制約してしまうことには注意が必要だ。直近では2012年9月に民主党代表選挙があったが、これは、在任中の首相に対する「野田おろし」のように、内紛を表面化させるきっかけとなったにすぎない。
政党のリーダーである党首を辞めさせることは、単に使えなかった「選挙の顔」をすげ替えることではない。自分たちの選んだ政治家がその任に値しなかったと認めることでもあるのだ。だから党首の交替は、選んだ人たち、辞めさせたい人たちの責任が明らかになるよう、透明な手続きの下で行われる必要がある。
党首の選出と交替は、政党の内紛を招くこともある難しいテーマだ。この民主化や透明化による変化には、未知の脅威や不安を感じるかもしれない。
しかし、次の選挙まで期間の空いている今こそが、特に参院選に敗れた政党にとっては、自分たちのリーダーをどう選ぶかを考え直す好機であるはずだ。
【初出:2013.7.27「週刊東洋経済(U40大図鑑)」】
※掲載後の総選挙結果を受け、一部表現を改めたところがあります
(担当者通信欄)
政党の党首が決まるとき、ニュースに注目される方は多いのではないでしょうか。ただ、その選出に自ら参加しようと思う機会や、そもそも、参加できる可能性を考えるような機会はあまりありません。選挙結果から、「選挙の顔」としての評価を下してしまいがちなことも含めて、国政にも影響を及ぼす政党リーダーの選出を、改めて考えてみるべきときに来ています。
さて、砂原庸介先生の「政治は嫌いと言う前に」最新回は2013年8月26日(月)発売の「週刊東洋経済(特集は、ワーキングマザー)」に掲載です!
【弱い地方組織の元凶、選挙制度の不均一】
全国政党は各地域に支部と呼ばれるような地方組織を持っています。これらの「地方政治における自律性」と「国政への参加の度合い」から政党組織の中央地方関係を考え、民主党はじめ地方で弱いといわれる政党がなぜ弱いのかに迫ります。
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砂原先生も寄稿の『政党組織の政治学』(建林正彦・編)を弊社より刊行いたしました。ぜひ本連載と併せてお読みください。
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