「病人は安静に」の常識は患者から何を奪うか がん患者ですら適度な運動はしたほうがいい

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病気だからといって、安静にするのがよいとは限りません。特に慢性病の場合は適度な運動が病状の改善に役立つこともあるのです(撮影:IYO / PIXTA)

「あなたは、病人だからそんなことしなくていいの。私が代わりにやってあげる」

「そんな役を引き受けなくていいんじゃない。あなたは病人なんだから」

病気となるとこのように、「栄養を取って安静にしていなくてはいけない」「あまり体を動かさないようにしなければ」と考えていませんか?

「病人は安静第一」は本当か? 

医師や看護師などの医療者にも、「病気には安静が第一」の考えがしみ付いています。そして、それは世の中の常識でもあるから、病人に対しては「安静に」と言っておけば間違いがないと考えがちです。でも、それは本当に正しいのでしょうか?

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わたしが専門分野としてきた肝臓病でも、昔から「高タンパク・高カロリー食」と「安静」が患者さんへの指導として強調されていました。

しかし、それは必ず肥満をもたらし、そして、肥満は脂肪肝をもたらします。1980年代前半から、すでに肥満と脂肪肝は社会全体の問題となってきていましたし、肝臓病患者は肝炎ウイルスによるものでも、アルコール性でも、肥満が増えていました。

かつて、アルコール性肝障害の患者は食事をろくに取らずに飲んでばかりいるから低栄養が肝臓を悪くしていると、低栄養が問題とされていましたが、1997年にはアルコール性肝障害が進展する危険因子として肥満が報告されました。その後、C型やB型肝炎ウイルスによるウイルス性肝炎でも、肥満が進展の危険因子としてあげられ、発がんを促す可能性も報告されています。

1990年代には、慢性病の多くでエアロビックな運動(有酸素運動)がよいことが言われ始めました。そこで、わたしは、肝臓病患者に対しても、肥満にならないようにと、「高カロリー・高タンパク」から「適正エネルギー・バランス食」に、「安静」から「適度な運動」へと生活指導をすることにしました。大学病院のスポーツクリニックで運動指導をしてもらうと、適度な運動は肝機能を悪化させることなく、むしろある程度改善させることを見いだしました。

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