ベルリンは、いま「第2のシリコンバレー」と称されるほどスタートアップ企業が集まり、立ち上がっている。イノベーションの創出においては、さまざまな企業や個人が多様性を維持しながら創造性を発揮できる場づくりが重要とされるが、ベルリンではそれがまさに具現化されている。「ベルリンの壁」の崩壊後、アーティスト、ハッカー、DJ、メーカー、ネオ・ヒッピーといった多様な人材が続々と集結し、こうした個人・企業が、いまのベルリンのスタートアップ・シーンの主要な配役となっているという。
その背景としてあるのが、欧州の主要都市の中では相対的に地価・物価が低いこと。40歳まではアーティスト(フリーランス)ビザが取得でき200万~300万の年収があれば滞在できるといった、世界から創造性豊かな若者が集まりやすい仕組みもあるという。若者のチャレンジを認め、長い目で見て応援する社会的な文化があることも魅力のひとつなのだろう。
「自己責任」で成長し、働き方をつくっていく時代へ
GEやジョンソン&ジョンソンなど名だたるグローバル企業において人材育成を行っている人事コンサルタントのカーステン・トリプラー氏は次のように語ってくれた。
「先の見通せない不確実性の時代、これまでのように会社が一元的にカリキュラムを作り、管理し、評価をするという方法では適切な人材育成ができなくなっています」
たとえばGEのようなグローバル企業でも、かつては社員が役職やランクに応じて身に付けるべき何十ものコアスキルを定め、それを学ばせるためのカリキュラムを組んでいたが、VUCAの時代ではそれでは対応できなくなっているという。
「すでに一部の先進的な企業では、“個人の成長の責任は企業ではなく従業員にある”と、人材育成のポリシーを転換しつつあります。もはや会社は従業員に『このランクに上がったら、〇〇というスキルを身に付けなさい』などとは言いません。『リーダーになりたければ、自分に何が必要かを自分で見いだし、自分で学んでください』と言うわけです」
世の中には、MOOCsやEラーニングのライブラリ、学校、そしてSeats2meetやFactoryといったコワーキングスペースとそこでの人との出会いなど、学びのためのコンテンツや場、機会がすでに無数に存在する。それらを自身で探索し、自分が必要とするものを選んで学んでいくことこそ、これからのビジネス・リーダーに求められていく。
「これから求められるのは、こつこつと学んで知識の幅を広げるというよりも、ものの“知り方”“学び方”を身に付けること。それがわかっていれば、たとえ不測の事態が起きたり、新しいことに直面したりする時にも、自発的に、かつ冷静に対応策について考えることができるでしょう」
自分の責任において、自分にとってどんな知識やスキルが必要なのかを考え、それを学ぶための場やネットワークを自ら探し出していく。そうした個人が出会い、集まって、さまざまな「知」やリソースを組み合わせながら仕事を創り出していく。そうした「探求と交流」の場や仕組み、文化をどうデザインしていくかが、これからの企業や社会には問われていくのではないだろうか。
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