創設者のニンケフィッサ氏は「有料席や貸し会議室などから得る資金を『経済資本』とするならば、こうした場から生まれたネットワークや共創(一社・一組織単独ではなく、企業や組織の垣根を超えた多様なメンバーでアイデアや企画を創り出すこと)は『社会資本』と言えます。Seats2meetは両者がバランスよく保たれていることで維持されているんです」と話す。
人がナレッジやスキルを交換すると、そこから新しい発想やアイデアが生まれ、新しいビジネスも生まれていく。Seats2meetを利用する6人に1人が、この場を通じて新しいプロジェクトに参加するか、新しい職を得るか、新しい企業を起こすかをしているという。
ニンケフィッサ氏は次のように語る。「これまで企業は、知識や従業員、取引先、得意先と、あらゆる関係性を内に囲うことに注力してきた。だが、このやり方ではもうイノベーションは生まれません。仕事の場を外に持ち、人と出会い、社会資本をシェアしていくという働き方は、個人にはもちろん企業にとっても、新しい経済的価値やイノベーションを生み出すために必要なことなのです」。
「きっかけづくり」をデザインすることが重要
同様の動きが、ドイツ・ベルリンでも起こっている。2014年、Google肝いりで開設されたスタートアップハブ(起業家支援の拠点)、その名も「Factory(ファクトリー)」だ。
ビール工場跡地をリノベーションした空間に、ツイッターやウーバー、サウンドクラウドなどの大手ベンチャー企業が拠点を置き、コワーキングスペースには約800人の起業志望者が集う。
有力企業が入居していたり、ハードが整っていたりすることだけが重要なのではない。実際に入居しているベンチャー企業のメンバーに聞いたところ、ピッチコンテストやワークショップ、著名なゲストを招いてのトークセッションが頻繁に行われ、テーマに応じて互いのアイデアを競い合い、化学反応させながら新しいアイデアやプロジェクトが生まれる「きっかけづくり」が充実していることこそ、 Factoryの魅力だという。
エントランス近くの壁には、その週に予定されているイベントや参加者を募っているコミュニティの告知がいくつも掲出されている。入居者同士でのホームパーティなども多く、常時さまざまなネットワーキングが行われている。運営チームが密に連携をとっていて、コミュニティ全体で成功していこうという空気があるという。