日本の「知識偏重教育」がオランダに学ぶこと

乙武洋匡が現地で触れた多様性を育む仕掛け

単なる暗記ではなく、子どもたちが興味のある話題から入るからこそ、生まれる授業

このサークル対話は、朝の会だけで行われるものではない。授業のなかでも頻繁に取り入れられている。たとえば、サークルの中央にある机の上に並べられたいくつもの石。これを見つめる子どもたちに、教師が今日の活動を伝える。

「じゃあ、このなかで自分がいちばん気に入った石を取り出して、みんなに紹介して」

ある男の子が、サークルの中央まで進み、ひとつの石を持ち上げる。先生が極めて穏やかな口調で問いかける。

――あなたは、どうしてこの石を選んだの?

「(値段が)高そうだったから」

――どうして、数ある石のなかで、この石は高いと思ったの?

「ええと……珍しそうだったから。ほかの石と違う形だし」

――他の石と形が違う珍しい石だと、どうして値段が高くなるのかしら?

こうしたやり取りを見ながら、石原さんが私に耳打ちしてくれた。

「こうした何げないやり取りから、子どもたちは経済感覚というものに触れることができるんです。ほかにも、『これはどこで採れた石だと思う?』という問いから地理的な知識を学んだり、『これは何年前くらいに採られた石だと思う?』という問いから歴史の話へと発展させたり」

――えっ、低学年なのに地理や歴史ですか?

「単なる暗記ではなく、子どもたちが興味のある話題から入るからこそ、低学年でもそうした内容に触れることが可能なのでしょうね。先生も、さまざまな方向に導いていく問いかけが非常にうまい。よく訓練されているなと感心させられます」

教師自身が「自ら学ぶ」という姿勢を見せること

オランダでは、教師に1人当たり年間13万円という研修費が支給される。彼らは、日々進化する指導法や教材、さらには社会課題にキャッチアップすべく、自らの興味や課題に沿って研修を受け、自己研鑽(けんさん)に励むのだという。

「だから、先生がいないことが多いんですよね。娘が学校から帰ってきて、『今日も先生いなかったよ』なんて言うこともしょっちゅうです。だけど、ほかの先生たちがカバーしてくれるから何の問題もないんです」

日本では、どうだろう。「世界一多忙」ともいわれる日本の教師たちは、学びたいという意欲があってもなかなかそうした時間を確保できないのが現状だ。また、教育委員会によって課される研修も少なくないが、そのすべてが教師にとって意欲的に取り組めるテーマや内容になっているとは言いがたい。

教師自身が「自ら学ぶ」という姿勢を見せることは、子どもたちにとって大いに参考になる。まさにアクティブラーニングの良き手本になるはずだ。学校での教育方法だけでなく、教員研修のシステムをとってもオランダから学ぶべきことはありそうだ。

(後編に続く)

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