日本の「知識偏重教育」がオランダに学ぶこと 乙武洋匡が現地で触れた多様性を育む仕掛け

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――えっ、校長先生も2人いらっしゃるんですか!?

「いえ、校長先生は1人しかいないのですが、不在の日は他の先生同士でカバーし合うんですね」

ワークシェアリングが浸透している社会だからこそ、父親が積極的に育児参加できる

もちろん、責任者不在だからといって保護者からクレームが来ることもない。なるほど、これだけワークシェアリングが浸透している社会だからこそ、父親も積極的に育児参加できるのだなと、つい先ほどの登校シーンを思い浮かべながら納得した。

オランダでは、すべての子どもが4歳の誕生日を迎えると学校に通うことができるようになる。義務教育は、原則として5歳から。この学校にも4~12歳まで約250人の子どもたちが通っている。しかし、教室を見て回っていると、日本とは異なる様子にどこか違和感を覚えることになる。よくよく観察していると、同じ教室のなかに、とても幼く体の小さな子もいれば、しっかりとした顔つきの大柄な子もいることに気づかされる。

同じ教室のなかに、とても幼く体の小さな子もいれば、しっかりとした顔つきの大柄な子もいる

年齢が違う子どもたちが一緒に学ぶということ

それもそのはず。イエナプラン教育では一般的な学年制を採用しておらず、ファミリーグループと呼ばれる異年齢学級を編成し、共に学んでいく。この学校では、低学年(4~6歳)、中学年(6~9歳)、高学年(9~12歳)という3つのカテゴリーを設けている。

それぞれの教室では、年長者が年少者に優しく接する、わかりやすく勉強を教えるといった光景を当たり前のように見ることができる。年長者はそこでリーダーシップを学び、年少者は数年後にその立場となることへの準備をする。そして翌年になると、年長者はそのグループを卒業して次のカテゴリーへと進み、年少者だった子どもたちが今度は年長者として、新しくカテゴリーに加わった幼い子どもたちをリードしていく――といったサイクルで学びを進めていく。

「これは私見ですが」と、石原さん。

「日本でも問題になっているいじめって、私は同質性を重視することから来ていると思うんです。だから、違いのある子どもがいじめられてしまう。それで言うとね、ここではいじめって起こりにくいだろうなと思うんです。だって、年齢が違う子どもたちが一緒に学んでいるわけですから、違いなんてあって当たり前なんです。そんなことで誰かをいじめようとする子なんて、誰もいない」

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