「べらぼう」恋川春町の「切腹」は本当に史実か 定信の「出版統制令」は文化弾圧だったか 「エロ・グロ・ナンセンス」規制の先に見据えたものとは

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定信と対立した蔦屋重三郎。定信の「出版統制令」、その「べらぼう」な真意とは(写真:星野パルフェ/PIXTA)
NHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」で描かれた「出版統制令」は、松平定信による庶民文化への「弾圧」として知られている。しかし、本当にそうだったのか。『未完の名宰相 松平定信』著者の大場一央氏が、その真の意味を探る。

恋川春町の切腹は史実か

NHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」では恋川春町(倉橋格)が切腹し、いわゆる「出版統制令」の深刻さが強調されている。

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これを実施した松平定信ですら予想外の展開にショックを受けているが、果たしてその実態はどうだったのだろうか。

恋川春町の死因は病死であり、当時から自害説は噂の域を出ていない。この自害説は定信の家臣である水野為長(1751~1824)が記した『よしの冊子』に残っている。

それによると、倉橋の主君である松平信義(1742~1801)が『鸚鵡返文武二道』という黄表紙本(大人向けの絵入り物語)を書いたものの、幕府の嫌忌に触れたため、倉橋が身代わりとなって自害したというのである。ドラマの内容はこれをもとに脚色したのだろう。

そもそも、「出版統制令」とはどのようなものだったのか。

その内容を見てみると①新規出版は許認可制とする、②裏づけのない時事情報を一枚画で版行することの禁止、③卑猥な内容や世間を煽る政治主張の規制、④遊郭の恋愛を描いた好色本の絶版、⑤新刊書の奥書に作者と版元の実名記入を義務づける、⑥児童の読み物に猥褻な内容を入れることの禁止、などとなっている。

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